扇を広げ、口元を隠しながら現れた桜さんの母。

「私が言っているのは何故、桜さんが苦しんでいるにも関わらず私に伝えず、しかもこんな場所に閉じ込めていたのかという事です」

「その子がいると家の中が呪われますもの。閉じ込めておくのは当たり前ではないかしら?」

「では彼女に暴力を振るったのはどこの誰ですか」

一気に確信を突くと、夫人は少し戸惑った様子を見せる。

「そ、そんなことわたくしは知りませんわ」

「見たところ、扇によってつけられた痣もあるようですが?」

角ばった細長い跡が腕に幾つも付けられている。

おそらく扇で叩かれたものだろう。

「あなたの処遇は後で検討します。桜さんの身は私が引き受けますので出て行ってください」

「わたくしは何も悪いことなどしておりませんわ!」

「いいから早く出て行ってください。あなたがいると桜さんが怯える」

薄れる意識の中でも、夫人の声が発される度に桜さんの体が小刻みに震えるのだ。

まだ完全に意識は戻っていないというのに、それほどまでに夫人の声は桜さんに恐怖を植え付けていたのだろう。