桜は妻の名前だ。

けれど、寝たきりとは一体?

結婚するときはもちろん、それ以前の婚約期間中も体調が悪いなんて聞いていなかったし、

定期的に交わす手紙にもそのようなことは書いていなかったはずだ。

そもそも体調を崩したのなら、この家の人間が僕に直接手紙をよこして知らせるべきではないか?

仮にも僕は彼女の夫なのだから。

「失礼する」

微かな違和感を感じながら、妻がいるという離れに向かうため動き出す。

一度、玄関を出て、外から見えるもう一つの建物に目星をつける。

「あっ、ちょ、お待ちくださいっ。今、奥様をお呼びしていますので…っ」

「夫人には後で挨拶をする。今は妻の体調を見るのが最優先だ」