手紙には離婚届けも同封されており、婚姻の時と同様、署名だけして送り返せという事らしい。
僕は家の為にも離婚だけは出来ないと手紙に書こうとしてやめた。
これは、一度会って話合うべきかもしれないと。
妻は〝顔も知らない人〟とは結婚を続けられないと言っているのだから、
顔合わせさえ済ませれば離婚は踏み留まってくれるかもしれない。
そう思い立ち、ちょうど仕事に一区切りついたところで妻の実家へ向かった。
船などを乗り継いで一週間かけて妻の住む屋敷まで尋ねると、
先ぶれを出さずに来てしまったからか、僕を出迎えた家令は慌てた様子でどうしたのかと問うてくる。
「突然すまない。妻に会いに来たのだが」
「えーと、桜さんは体調が優れなくてですね、その…、離れの方で寝たきりの状態でして…」