母がくれる修行のあとのお菓子とか、父と二人で出かけた街で買ってもらった船や汽車の玩具とか。

僕が笑顔を見せると、普段笑わない二人も微かに笑っていたように思う。

だから僕も仕事が落ち着いて子供が出来たら、精一杯大切に育てるつもりだ。

妻に対しても、夫として最低限の礼儀や責任は果たすし、金銭面で苦労させることはないだろう。

近況は定期的に手紙で報告している。

手紙に、一ヶ月は生活できるくらいのお金を包んで送っている。

『これで美味しい物や、綺麗な装飾品でも買ってください』と言葉を添えて。

返事は『ありがとうございます。どうかお体にお気をつけください』といった簡単なものだったが、別に構わなかった。

僕も最低限の言葉以外は書いていなかったから。


ーーそんな生活を一年ほど続けた頃、突然妻から離婚の申し出があった。

『やはり、顔も知らない相手との結婚は続けられない』と。