桜さんはとても落胆した様子で、けれど僕を責めることはしなかった。
「仕方ないですよね。傍から見れば、悪霊ですから…」
「本当に申し訳ありません」
「いえ、いいんです。梅さんは、ずっと私を苦しめていることに苦しんでいたから」
そうは言っても、辛そうな桜さんを見ていると罪悪感を感じずにはいられない。
もっとあの梅さんという死霊の様子を見て、悪霊か否かを見極めれば良かった。
物の怪は例に漏れず、すべて人間を苦しめるものだという先入観が仇になった。
「…とりあえず、僕の実家に移動してもよろしいですか?ちゃんと治療を受けましょう」
「でも、私はもう助からないのでは…」
「いいえ、絶対に助けます。梅さんにも、お願いされたので」
そう言うと、彼女は渋々といった様子で受け入れた。
桜さんが生きることを諦めることは、僕も梅さんも望んでいない。
夫として、必ず妻を助けてみせる。