『あなたにお伝えしたいことがいくつかございます。

まず、あなたに返事の手紙を書いていたのは桜ではありません』

「えっ…」

最初の文面から驚きの声を上げてしまった。

思えば確かに、ずっと寝たきりの状態らしき桜さんがどのようにして手紙を書いていたのかは不思議だったが、代筆を頼んでいたのか。

『私は桜に憑いている死霊です。

本当は桜を苦しめたくはなかったのですが、離れようにも離れられず、
せめて出来るだけ家族の暴力から桜を守ることしかできませんでした。

桜に近づく者は体調が悪くなるよう仕向けたりしましたが、それでも死霊の私ではできることも少なく…。

日に日に弱っていく桜とは意識伝達で会話をしており、気を失ったり眠っている間も二人で沢山話をしていました。

手紙の返事もそこで伝え聞いて、勝手ながら私が代筆していたのです。

離婚の話も、もう自分の命は長くないからという桜の意思でした。

桜の命を短くしている一端である私が言うのもなんですが、どうか何卒、桜をお救い下さい。

生前、家族に恵まれず、自分を押し殺してきた私のことを受け入れてくれた初めての人が桜だったのです。

どうか、どうか私の大切な友人をよろしくお願いいたします』