僕は祓い師として全国津々浦々を回っている。
医学を習得した者では治せない病には、必ずと言っていいほど物の怪が取り憑いている。
その物の怪を祓うのが僕の仕事だ。
僕はこの仕事に誇りを持っているし、苦しんでいた人を救えたときにはこの上ない喜びを感じる。
やりがいのある仕事だと思う。
全国を回るため、特定の家を持つことは出来ないが、こんな僕にも妻がいる。
家同士が決めた結婚で、妻とは入籍はしたものの、顔を合わせたことはない。
忙しい身の祓い師には珍しくないことで、先代の祓い師である母も先々代の祖父も同じような結婚だった。
だから僕もそれが普通なのだと思っていた。
両親は顔を合わせても話もしないし、一緒に食事を取ることは絶対にない。
祓い師の修業は厳しかったが、それでも両親は息子である僕には最低限、愛情を持ってくれていたと思う。