「先に私を拒絶したのはそちらだ。あなた達に拒否権はない」

「…あ、あの、私、名前書きます」

「サユッ、黙りなさいっ」

これ以上言い合うと危険だと思い了承すると、父は私の腕を強く掴んで下がらせようとする。

「離婚を承諾して頂けたようなので、こちらに名前を頂戴したら私は役所に行って手続きを済ませます」

「チッ。おい、サユさっさと書いてお帰り頂きなさい」

「は、はい…」

父もようやく諦め、自分の書斎へ引っ込む。

「色々と申し訳ありませんでした」

紙に名前を記したのち、深々と頭を垂れて謝罪する。

「…一度でもそうして素直に応じて下さっていれば、私たちはまだ夫婦でいられたでしょうね」

「…」

それには何も答えず、ただただ頭を下げて彼を見送った。