誠一郎さんは普段の軍人の仕事もあるはずなのに、休みや暇を見つけては寺まできて手伝いに来る。
吹雪で来れないだろうと思った日にも現れたときは、さすがに驚いた。
肩や頭に雪をのせて、いつもより顔を真っ赤にして、それでも尚、私と会うと満面の笑みを浮かべた。
不覚にもその笑顔にときめいてしまったりした。
出会いは少し変わっていたものの、お寺で会って彼の人柄に触れる内に本当はとても誠実な人なのだろうと感じた。
隣にいて欲しい、そう最初に言われたときは無理だろうと思ったが、彼とならもしかしたら本当の夫婦にもなれるのかもしれない。
実の両親を見ていて、好きな人と幸せな結婚を…、なんて思い描くことは出来なかったし、誠一郎さんが相手でも不安はなくなることはないだろう。
でも、春になったら伝えようと思う。
「もうここに来る必要はありません」
そう言って戸惑う誠一郎さんを見てから、
「私も一緒に連れて行ってください。あなたの傍に、ずっといさせてください」
続けて伝えた言葉に安堵した誠一郎さんに目一杯抱き締められて、二人で新たな道を歩いていくのだ。