*
私とねねちゃんはその日、学校を休んだ。
私たちは大急ぎで部屋を出ると、転がるように寮を飛び出した。
行き先は、春陽くんがいる病院だ。
息を切らして、全速力で病院に向かう。
汗が出るほど、必死に走って。
それでも身体は不思議なほど、冷たいままだった。
『もしも、その時が来たら……僕は迷わず、春陽のために命を捧げるつもりです。たとえ、父さんに怒られるようなことになったとしても、それでも僕は春陽に生きていてほしいから』
夏祭りの夜の情景。
頭の中に、秋斗くんの切ない表情が弾けるように蘇る。
秋斗くんと春陽くん。
どちらかでしか生きられなくなる、運命の分岐点。
もしかして、『その時』が来てしまったのだろうか。
秋斗くんは私たちに何も言わないまま、春陽くんのために死んでしまったのだろうか。
そう考えただけで、世界が静かに色を失っていく。
そう思っただけで、今まで抱いていた希望が意味を失っていく。
みんなで一緒に『共依存病』そのものを変えたかったのに、どうして私たちを残していなくなるの。
『篠宮さん、鳴海さん』
『雫、ねねちゃん』
この世界に秋斗くんと春陽くんがいる。
私たちは、たったそれだけで良かったのに。
どうして、それすらも許されないんだろう。
「秋斗くん……」
病院の入口前にたどり着き、私は呼吸を整えた。
受付で部屋の番号を聞いて、私とねねちゃんは院内を進んでいく。
秋斗くんと春陽くんがいる病室は本来、家族以外は面会謝絶だ。
でも、秋斗くんと春陽くんが、秋斗くんたちのお父さんを説得してくれたおかげで、私とねねちゃんは何とか、病室に赴くことができた。
本当ははるくんのお母さんも、『共依存病』の治療に関わりたかったんだけど、秋斗くんたちのお父さんから拒まれてしまったそうだ。
怖い……。
病室に入るのが怖い……。
部屋に近づくにつれ、様々な負の感情が私の心を蝕んでいく。
それでも歩いていくうちに、秋斗くんと春陽くんがいる部屋番号が見えてくる。
「ねねちゃん。春陽くんがいる病室は、ここみたい」
「……そうなんだね」
私とねねちゃんが緊張した面持ちで立つと、部屋のドアがスライドする。
この先に続く衝撃を、私は受け止めきれるだろうか。
私とねねちゃんはその日、学校を休んだ。
私たちは大急ぎで部屋を出ると、転がるように寮を飛び出した。
行き先は、春陽くんがいる病院だ。
息を切らして、全速力で病院に向かう。
汗が出るほど、必死に走って。
それでも身体は不思議なほど、冷たいままだった。
『もしも、その時が来たら……僕は迷わず、春陽のために命を捧げるつもりです。たとえ、父さんに怒られるようなことになったとしても、それでも僕は春陽に生きていてほしいから』
夏祭りの夜の情景。
頭の中に、秋斗くんの切ない表情が弾けるように蘇る。
秋斗くんと春陽くん。
どちらかでしか生きられなくなる、運命の分岐点。
もしかして、『その時』が来てしまったのだろうか。
秋斗くんは私たちに何も言わないまま、春陽くんのために死んでしまったのだろうか。
そう考えただけで、世界が静かに色を失っていく。
そう思っただけで、今まで抱いていた希望が意味を失っていく。
みんなで一緒に『共依存病』そのものを変えたかったのに、どうして私たちを残していなくなるの。
『篠宮さん、鳴海さん』
『雫、ねねちゃん』
この世界に秋斗くんと春陽くんがいる。
私たちは、たったそれだけで良かったのに。
どうして、それすらも許されないんだろう。
「秋斗くん……」
病院の入口前にたどり着き、私は呼吸を整えた。
受付で部屋の番号を聞いて、私とねねちゃんは院内を進んでいく。
秋斗くんと春陽くんがいる病室は本来、家族以外は面会謝絶だ。
でも、秋斗くんと春陽くんが、秋斗くんたちのお父さんを説得してくれたおかげで、私とねねちゃんは何とか、病室に赴くことができた。
本当ははるくんのお母さんも、『共依存病』の治療に関わりたかったんだけど、秋斗くんたちのお父さんから拒まれてしまったそうだ。
怖い……。
病室に入るのが怖い……。
部屋に近づくにつれ、様々な負の感情が私の心を蝕んでいく。
それでも歩いていくうちに、秋斗くんと春陽くんがいる部屋番号が見えてくる。
「ねねちゃん。春陽くんがいる病室は、ここみたい」
「……そうなんだね」
私とねねちゃんが緊張した面持ちで立つと、部屋のドアがスライドする。
この先に続く衝撃を、私は受け止めきれるだろうか。