鳴り響く秋の音と終わらない春の恋


この町に来てから……二人には一度も会っていない。

転校や病院の手続きなどが忙しかったからか、秋斗くんと春陽くんからの連絡はなかった。
だから、久しぶりのメールに心が高鳴る。
私はスマートフォンを手に取って、メールの文章に目を通した。

『おっす、雫。今日から学校だな。午前中は診察があるから、午後から行くな』

今日は春陽くんの日だと分かって、私は知らず頬を緩める。
秋斗くんと春陽くん。二人のことを思うと、心の内側が温かくなるのを感じる。

『おはよう、春陽くん。春陽くんは午後から、学校なんだね。秋斗くんは元気?』

私は携帯を操作し、文字を打ち込んで送信ボタンを押した。

『おう、元気だ。新しい学校生活、楽しみだなー』

すぐに春陽くんから返事が返ってきた。
学校で会うのも、みんなで集まって久しぶりに会話するのも、どちらも素敵なことで想像するだけで心が弾む。
だけど……。

「あのね、ねねちゃん。今日は春陽くんの日みたい」
「……今日も?」

思い切ってそう伝えたら、それまで楽しそうに笑っていたねねちゃんの顔から一瞬で笑みが消えた。
違和感を覚えながらも、私は不思議そうに首を傾げる。

「ねねちゃん、どうかしたの……?」
「……なんでなんで。昨日も一昨日も、その前もずっと、はるくんの日だったのに……」

息を呑む気配が伝わるほどの沈黙の後、ねねちゃんがそうつぶやくのが聞こえた。
私はそこでようやく、ねねちゃんの表情が強張っていることに気づく。

「しずちゃん。わたし……」

ねねちゃんは躊躇うような間を空けて、それを口にする。

「この町に来てから一度も、あきくんに会っていないの」
「え……」

どくんっ。
心臓が強く脈打つ。
同時に全身を駆け巡る、嫌な予感。

まさか――。

私はその瞬間、世界がひっくり返ったような驚きと、底知れない恐怖に打ち震えていた。