秋斗くんと春陽くん、どちらも救う手段。
はるくんのお母さんが伝えたその治療法は、同じ魂を持つ――『共依存病』の患者であるはるくんの状況をもとにしたものだった。
はるくんの生きた証が、秋斗くんと春陽くんを救っている。
小さな……けれど、確かな奇跡。
それも全て、秋斗くんと春陽くんが痛みと願いの果てに辿り着いたものだ。
二人で一人。
いつまでも変わらない彼らの生き様が息苦しいほど眩しくて、どこまでも胸に鳴り響く。
余命宣告された日を乗り越えて、今日も話せることが嬉しくて、私の胸は音を立てて高鳴る。
でも……これから先の未来は、どこまでも不透明で不確かだ。
求めて。求めて。求めた先。
どんなに足掻いても報われずに終わる可能性もある。
いつか秋斗くんは春陽くんのために、その命を差し出すかもしれない。
その前に春陽くんが亡くなるかもしれない。
私たちはその運命を変えることはできないかもしれない。
けれど、それと同じだけ希望もあるはずだ。
秋斗くんが春陽くんとともに、これからも一緒に生きていく。
そんな未来だって無限の可能性の中には存在する。
確かな想いを募らせていると、いつの間にか今日の目的地の一つである観覧車に着いていた。
「相変わらず、観覧車、でかー」
「ほんとだね」
「すごいねー」
私たちは和気あいあいと観覧車に乗るための列に並ぶ。
近くで見ると、さらに観覧車の大きさが並外れているような気がする。
やがて、私たちの順番が来て、チケットをスタッフに渡す。
ゴンドラに乗り込むと、私たちは椅子に腰掛けた。
「わあ。すごい眺め……!」
「行く前に乗れて良かったねー」
私たちを乗せたゴンドラはゆっくりと浮上していく。
始めは海浜公園の桜が視界を占めていたけど、高度が上がると次第に景色も開いていった。
温かな陽射しがキラキラと輝く。春の海に包まれたゴンドラ。
その奇跡のような光景を眺めながら、春陽くんが静かな声を出す。
「雫、ねねちゃん。俺たちが初めて、『共依存病』のことを知った時のこと、話していなかったよな?」
「うん」
意外な質問に、私はきょとんとする。
どうして、そのことを今、語ってくれる気になったのかは分からない。
だけど、私たちを見つめる春陽くんの顔は真剣そのものだった。
もしかしたら、春陽くんなりの覚悟の表れなのかもしれない。
「俺たち、物心ついたばかりの頃は、自分が普通じゃないなんて思ってもいなかったんだよな」
春陽くんはどこか遠くを見ながら、昔のことを語り始めた。
「『二人で一人』が当たり前だったからさ。ただ、一緒に遊べないことと……いつまで経っても、病院から退院できなかったことに対しては不満を覚えていた」
「えっ?」
「退院できなかったの?」
その事実に、私とねねちゃんは驚きで目を瞬かせる。
「ああ。てーか、退院させてもらえなかった方が正しいかもしれねーな。『共依存病』は患者数が少ない難病の一つだったし、普通に生活することはできない。簡単に退院させるわけにはいかなかったんだろうなー」
春陽くんは寂しそうに視線を落とした。
あの頃を思い出すように。
「やがて、俺たちの担当医師の先生から、俺たちは普通とは違うってことを聞かされた。『共依存病』の存在。そこでようやく、一日置きに身体が入れ替わるのは、普通じゃないことって知ったんだ」
秋斗くんと春陽くんが生まれた時からずっと、『共依存病』の治療のために入退院を繰り返している総合病院。
あの日、病室に赴いた時の春陽くんの寝顔を思い出す。
まるで脱け殻になった身体だけがベッドに置き去りにされているような、そんな虚無感だけが病室を満たしていた。
はるくんのお母さんが伝えたその治療法は、同じ魂を持つ――『共依存病』の患者であるはるくんの状況をもとにしたものだった。
はるくんの生きた証が、秋斗くんと春陽くんを救っている。
小さな……けれど、確かな奇跡。
それも全て、秋斗くんと春陽くんが痛みと願いの果てに辿り着いたものだ。
二人で一人。
いつまでも変わらない彼らの生き様が息苦しいほど眩しくて、どこまでも胸に鳴り響く。
余命宣告された日を乗り越えて、今日も話せることが嬉しくて、私の胸は音を立てて高鳴る。
でも……これから先の未来は、どこまでも不透明で不確かだ。
求めて。求めて。求めた先。
どんなに足掻いても報われずに終わる可能性もある。
いつか秋斗くんは春陽くんのために、その命を差し出すかもしれない。
その前に春陽くんが亡くなるかもしれない。
私たちはその運命を変えることはできないかもしれない。
けれど、それと同じだけ希望もあるはずだ。
秋斗くんが春陽くんとともに、これからも一緒に生きていく。
そんな未来だって無限の可能性の中には存在する。
確かな想いを募らせていると、いつの間にか今日の目的地の一つである観覧車に着いていた。
「相変わらず、観覧車、でかー」
「ほんとだね」
「すごいねー」
私たちは和気あいあいと観覧車に乗るための列に並ぶ。
近くで見ると、さらに観覧車の大きさが並外れているような気がする。
やがて、私たちの順番が来て、チケットをスタッフに渡す。
ゴンドラに乗り込むと、私たちは椅子に腰掛けた。
「わあ。すごい眺め……!」
「行く前に乗れて良かったねー」
私たちを乗せたゴンドラはゆっくりと浮上していく。
始めは海浜公園の桜が視界を占めていたけど、高度が上がると次第に景色も開いていった。
温かな陽射しがキラキラと輝く。春の海に包まれたゴンドラ。
その奇跡のような光景を眺めながら、春陽くんが静かな声を出す。
「雫、ねねちゃん。俺たちが初めて、『共依存病』のことを知った時のこと、話していなかったよな?」
「うん」
意外な質問に、私はきょとんとする。
どうして、そのことを今、語ってくれる気になったのかは分からない。
だけど、私たちを見つめる春陽くんの顔は真剣そのものだった。
もしかしたら、春陽くんなりの覚悟の表れなのかもしれない。
「俺たち、物心ついたばかりの頃は、自分が普通じゃないなんて思ってもいなかったんだよな」
春陽くんはどこか遠くを見ながら、昔のことを語り始めた。
「『二人で一人』が当たり前だったからさ。ただ、一緒に遊べないことと……いつまで経っても、病院から退院できなかったことに対しては不満を覚えていた」
「えっ?」
「退院できなかったの?」
その事実に、私とねねちゃんは驚きで目を瞬かせる。
「ああ。てーか、退院させてもらえなかった方が正しいかもしれねーな。『共依存病』は患者数が少ない難病の一つだったし、普通に生活することはできない。簡単に退院させるわけにはいかなかったんだろうなー」
春陽くんは寂しそうに視線を落とした。
あの頃を思い出すように。
「やがて、俺たちの担当医師の先生から、俺たちは普通とは違うってことを聞かされた。『共依存病』の存在。そこでようやく、一日置きに身体が入れ替わるのは、普通じゃないことって知ったんだ」
秋斗くんと春陽くんが生まれた時からずっと、『共依存病』の治療のために入退院を繰り返している総合病院。
あの日、病室に赴いた時の春陽くんの寝顔を思い出す。
まるで脱け殻になった身体だけがベッドに置き去りにされているような、そんな虚無感だけが病室を満たしていた。