「ふわふわ……」

甘い香りで満たされた公園で、私もワッフルを口に運んだ。
いちごのワッフルはふわふわの生地と、甘くて新鮮ないちごが絶妙ですごく美味しい。
ワッフルを食べ終わった後、ねねちゃんは言葉ひとつひとつを丁寧に選ぶように話し出す。

「……しずちゃん、ごめんね」

ねねちゃんは迷うように口を動かし、そして躊躇うように視線を落とした。

「はるくんが亡くなってから、しずちゃんはずっと苦しんでいたのに……。わたし、自分のことだけで精一杯で、何もできなかった」

はるくんが亡くなった日。
その事実に絶望した私とねねちゃんは互いに心に深い傷を負っていた。
いまだ鮮明に覚えている――思い出せてしまう当時の出来事。
私はずっと家で塞ぎ込んでいた。
周りの人たちの励ましの言葉を上の空で聞いていた。
ねねちゃんからの電話やメールにも反応は乏しかった。
次第にねねちゃんからの連絡も途絶え、疎遠になっていく日々。

体も心も、途方もなく独りになっていくような、恐ろしいほどの絶望と寂しさを、私はひしひしと感じた。

……辛い記憶ほど、後を引くものだと思う。
楽しかった記憶は、すぐに泡沫の夢のような思い出になってしまうというのに。

「わたし、はるくんのことばかり考えてた。はるくんのことで頭の中がいっぱいだった。周りが見えていなかった……」

ねねちゃんの言葉が、私に重く響く。

「それは私も同じだよ。私も、はるくんのことばかり考えてた。ねねちゃんは何度も連絡してくれたのに、私はずっと、いつまでも塞ぎ込んでいた」

大切であればあるほど、過去を手放せない。
私はずっと過去に縛られてた。
だから――。

「高校で春陽くんと出会わなかったら、きっと……今も塞ぎ込んでいたと思う」
「しずちゃん……」

ねねちゃんの表情が張り詰めたのが分かった。

私たちの進む明日。私たちが生きる未来。
その傍に春陽くんがいるとしても、それははるくんじゃない。
けど――。

「……ねねちゃんは春陽くんと出会って、何か変わった?」
「すごく変わったもん」

すぐに返されたねねちゃんの言葉に、私は胸の底が熱くなるような心地がした。

「心が軽くなった。元気になった。幸せな気持ちになった。わたし、はるくんと――春陽くんと出会ってから、心の中がいっぱいいっぱい明るい色に変わったー」
「うん。私もいっぱいいっぱい変わったよ。でも、一番変わったのは……二度目の恋をしたことかな」

あの日を乗り越えて、今日もねねちゃんと話せることが嬉しくて、私の胸は音を立てて高鳴る。