『秋斗の身体の方に魂が紐付いているのなら、完全に紐付く前に……秋斗が死ぬことで春陽は生き残ることができる』
はるくんのお母さんが告げていた、春陽くんの時間を取り戻す方法を思い出す。
でも、この事実は黙っていようと思った。
もし私なら、自分を助けるために大切な人が代わりに死ぬと考えると、とても平常心ではいられない。
それに秋斗くんと春陽くん、どちらかだけを救うんじゃない。
どちらも救いたいから――。
私はいつの間にか、秋斗くんと春陽くんのことを心の底から大切だと思うようになっていた。
遥か遠く先にいる大切な兄弟を求めてもがく二人の特別になりたいから。
「あのね、春陽くん、私からも聞かせてほしいことがあるの」
「聞かせてほしいこと?」
「再来週の日曜日の夏祭り。そこで聞かせてほしいの。あの日の答えを」
私の胸を打つのは初めて秋斗くんと出会った日、公園で告白したこと。
この胸に抱く想いは、そこへと通じる道だと痛いほどに思い出す。
「……雫、ごめんな。ずっと答えを先伸ばしにして。夏祭りの時に言う。俺の――いや、俺たちの気持ちを」
「うん。待ってる」
春陽くんの真剣な声が、胸に心地よく響く。
初夏の瑞々しさが、近くて遠い三人の距離を埋めていった。
「そういえば、秋斗が長男だとしてさ」
ふと思い至ったように、春陽くんは盛大に首を傾げた。
「俺と陽琉って、どちらが兄貴?」
「はるくんだよ」
「マジで? てか、俺、末っ子だったわけ!?」
私の言葉は、春陽くんの瞳を揺らがせるのに十分すぎた。