「だ、大丈夫だから! 一人で歩けるから!」
「そんな真っ白な顔をして大丈夫とか言われても説得力ねーし」
私は三宅くんに支えられて保健室へとたどり着く。
今は保健室の先生はいないみたいだ。
三宅くんは先生が戻ってくるまで、私の傍にいてくれるみたいだ。
ふたりぼっちの保健室。心地よい温もりが私に訪れた。
連れ添ってくれた嬉しさと緊張で、私は胸がいっぱいになる。
「三宅くん、ごめんね」
「ごめんは禁止」
「……うん。ありがとう」
目の前には太陽のような三宅くんの笑顔。
その瞬間、私はそれまで経験したことがないような胸の高鳴りを感じた。
「……ねえ、三宅くん。聞いてもいいかな?」
「ん……?」
「共依存病って、どんな感じの病気なの?」
そもそも、共依存病とは何か。
そんな私の気持ちを汲み取ったのか、三宅くんは頬を撫でながら応えた。
「おう、一日置きに身体が入れ替わる病気だなー」
「よく漫画とかである入れ替わりみたいなのかな」
どう応えたらいいのか分からず、私は曖昧な顔で曖昧に返す。
「そうそう。そんな感じー」
心を奪われたのは笑う姿だった。
私はいつの間にか、三宅くんのことを目で追っていた。
「俺の相方、秋斗って名前だから。こっちで出会った場合も仲良くしてくれよな」
「……うん」
今の自分とは別に、もう一人自分がいるのはどういう感覚なのだろうか。
まるで、どちらも自分自身のように三宅くんは表現している。
「三宅くんと秋斗くんは、その、兄弟……なの?」
「うーん、そうだな。同じ魂を宿している双子の兄弟みたいな感じかな」
「そうなんだね」
背中合わせで、言葉も交わせなくて。
それでも生きているもう一人の自分。
たとえ、どちらかが死んでしまっても、それはなかったことになったりはしない。
「違う学校に通っているの?」
「そうそう。父さんがなんつーか世間体を気にしてさ。同一人物が同じ学校に通っているのはまずいんじゃないか、って話の流れになって俺、三宅春陽はこの高校に。で、三宅秋斗は別の音楽科の高校に通う運びになったんだよな」
零れ落ちた言葉は、切なさを帯びて私の耳に届いた。
「それでも変に思う人がいるかもしれないから、って、秋斗の時は父さんに言われたとおりにキャラ作りをしている」
「キャラ作り……?」
私が不思議そうに首を傾げると、三宅くんはとっておきの腹案を披露するように笑った。