秋斗くん、春陽くん、はるくん。
私たちは今も昔も、同じ魂を持つ人たちを好きになっている。

それが多分、全てだった。
嬉しいのに、切なくて、寂しくて、それでも、その全てが優しさに包まれているような気がして。
私は少しだけ、頬を緩めてしまう。

「あのね、ねねちゃん。秋斗くんと春陽くん、二人を絶対に引き離させたりはしないから。どんな手を使っても、必ず二人を助けてみせるよ」
「うん、わたしも同じ気持ちだよ。でも、どうしたらいいのかな?」
「悲劇の連鎖を終わらせる」

大切な人たちの笑顔を賭けた一世一代の私の告白に、ねねちゃんは目を見開いた。
『共依存病』そのものを変える。そうしないと、せっかくの決意に泥を塗ってしまうから。

「春陽くんの時間を取り戻す方法は、はるくんのお母さんが語った方法が唯一無二の手段かもしれない。でも、秋斗くんと春陽くんとはるくんは、本来の『共依存病』の患者とは症状が異なっている。それはきっと、希望の光だと信じたい!」

私はつきはぎだらけの幸福を抱きしめる。
それでも弱さを背負うことはしないで、前を向いて。
それができたら、きっと私たちの中に未練なんて悲しいものは残らない。

「私、強くなるから。好きなものを好きだって胸を張って言えるようにするために」

悩んでもがいて見つけた先で、私の胸がとくんと揺れた。

「私は自分の思うように生きたい」
「うん。わたしもー」

そう願うことは、私とねねちゃんにとっては格別なものに違いない。
そこでねねちゃんが途中にあった掲示板を見て、「あっ」と声を上げた。

「これっ、希望の光! 再来週の日曜日!」

ねねちゃんが指差した先には、この街で毎年、行われている夏祭りのポスターが貼られている。
花火が描かれたそれに溶け込むように、私は二年前の夏祭りの光景を思い浮かべた。
その目映さが――あの日のはるくんの笑顔に良く似ていたから。

「ねねっ、行こう! みんなで行こう!」

はしゃぐねねちゃんの様子に、思わず私まで嬉しくなってくる。
明るく楽しい雰囲気を作ってくれる、ねねちゃんが好きだ。
ねねちゃんはきっと、夏祭りに行けば、あの日のはるくんに出逢えると思っているのだろう。
再来週の日曜日なら、特に予定はない。

「うん。みんなで行こう!」
「えへへ、約束ね!」

私がそう言うと、ねねちゃんの表情がぱあっと明るくなった。

再来週の日曜日。
秋斗くんの日なのか、春陽くんの日なのかはまだ、分からない。
でも、魅力的な誘いだった。
一気にワクワクしてくる。夏祭り、すごく楽しみだ。
初夏の風が、一年前と変わった私たちの背中を優しく押してくれた。