はるくんのお母さんと別れた後、私とねねちゃんは列車に揺られていた。
夕日が世界を赤く染めていく。
少し混み合った車内で、ねねちゃんは何かを共有するようにずっと私の手を握りしめていた。
そして私も、その手を離そうとはしなかった。
ようやく最寄り駅に着いたのは、だいぶ遅い時間になってからだった。

私たちはついに春陽くんの時間を取り戻す方法を知った。
でも、それは私たちの望んだものではなくて。
この局面を乗り切るにはどうしたらいいんだろう。

秋斗くんと春陽くん、どちらも救いたい。助けたい。
この想いが昇華された時、きっと奇跡が起きるかな?

「どうしよう、ねねちゃん。私、秋斗くんと春陽くんのこと……」
「うん。わたしもね、あきくんとはるくんを救うことを絶対に諦め……」

言いかけたねねちゃんの声を、私の声が追い抜いた。

「好きすぎて、苦しい」

きょとんとしたねねちゃんは少し考えるように、呼吸を挟んだ。

「……そっか。しずちゃん、わたしもその気持ち、よく分かるよ。わたしはあきくんと今日、初めて会ったけど、やっぱり……はるくんと同じ人だと――『大切な人』だと感じたー」

私は息を呑んだ。
私以外の人が聞いても、何を言っているのか分からないだろう。
その言葉が示すあり得ない憶測に、私は震えた。
それはまるで――

「しずちゃん。わたしたち、また同じ人を……ううん、同じ魂を持つ人たちを好きになっちゃったね」
「え……」

ねねちゃんに聞かれ、私は答えに迷う。
痺れを切らしたねねちゃんは強引に私の腕を引っ張った。

「しずちゃんは……はるくんのこと、好きだったんだよね。ごめんね。わたし、ずっと前から気づいていたの」

ねねちゃんは核心を突きつける。
予想もしていなかった真実に、私は思わず、目の奥が熱くなってしまった。

「はるくんのこと? それとも春陽くんのこと?」
「どちらも、だよ」

切ない感情が、ねねちゃんの唇を震わせる。
ねねちゃんはずっと前から、私がはるくんのことを――そして春陽くんのことを好きなのを知っていた。
私の驚きように、ねねちゃんは小さく微笑む。

「しずちゃんを見ていたら分かるよ。わたしたち、いつでも同じ魂の人たちに惹かれ合っているね……。『ソウルメイト』みたい……」
「ソウルメイト?」
「前世から深い繋がりを持っている大切な存在。お母さんが教えてくれたのー」
「そっか……そうかもしれないね」

その言葉の意味を理解した瞬間、目頭の奥にじんわりとした熱が生まれた。
私の視界がぼやけていく。
だけど、泣き出してしまいたいような心地ではなく、何だか気持ちは穏やかなままだった。