「教えてください。私たち、どうしても春陽くんを救いたいんです!」
「お願いします!」
私とねねちゃんは強い意思とともに声を揃える。
たとえば数年先。秋斗くんと春陽くんはどうなっているのだろう。
分からない。
ただ、分からないなりにひとつ気づいたのは、状況が変わるのを待っているだけではだめだということだった。
私たちの決意を前に、はるくんのお母さんの瞳が深く沈む。
「……分かった。しずちゃん、ねねちゃん、覚悟して聞いて」
胸の辺りがきりきりと痛むのを感じる。
この先に続く衝撃を、私は受け止めきれるだろうか。
「秋斗の身体の方に魂が紐付いているのなら、完全に紐付く前に……秋斗が死ぬことで春陽は生き残ることができる」
「……え」
思わず、息が詰まる。
私は当惑し、その言葉の意味を飲み込むのに時間がかかった。
「秋斗が死ぬ――春陽の時間を取り戻す方法はそれしかないの」
空白。
あまりにも唐突な……はるくんのお母さんの宣言に、私の思考が真っ白に染まってしまった。
数秒経って、ようやくひねり出せた言葉は微妙に震えていた。
「そ、そんなの、ダメだよ……!」
「そうだよ! あきくんとはるくん、どちらも大切な存在だもん!」
まさかの展開に、私とねねちゃんの心が揺さぶる。
「でも、それしかないの」
はるくんのお母さんの断言に、私の胸がどうしようもなく苦しく痛んだ。
はるくんのお母さんの言うとおり、それしか方法はないのかもしれない。
だけど、どちらかを犠牲にする方法では、誰も幸せになれない。
「……違う! それだけじゃない!」
思わず、私は弾かれたように声を上げていた。
「お願いします。それだけしかない、って言わないで……。どうか、二人が一緒に生きることを諦めないでください!」
「しずちゃん……」
私の強い懇願に、はるくんのお母さんの瞳に希望の光がわずかに宿る。
『占いとは前向きになるためのツール。占いの結果を真摯に受け止め、対策を考えて、自分なりにどうすれば最善の形になるのか考える、ということが大事だと思うんだよなー』
はるくんからもらったその言葉を心の支えにしながら、私は必死に訴えかけた。
「秋斗くんと春陽くん、どちらかだけを救うんじゃない。どちらも救いたい」
明日になれば、また、春陽くんに会えるかもしれない。
でも、絶対という保証はどこにもない。
だから――。
「絶対に諦めたくないから。私は大切な人たちを救うために、この命を一秒でも捧げたい」
はるくんが言っていた最善の形を求めて。
それはどうしようもない、懇願にも近い、止めどない想いとして、私の中から滾々と溢れ続けている。
「一秒でも……そうね。諦めるのはまだ、早いわね」
はるくんのお母さんは少し困った表情で小さく笑う。
「しずちゃん、ねねちゃん、ありがとう。私も最後まで諦めない。今度こそ、秋斗と春陽、どちらも救う手段を見つけてみせるわ」
景色ではなく、目の前の私たちだけを見つめて。
はるくんのお母さんは決然とした表情で言った。