「陽琉たちはそう意味でも、本来の『共依存病』の患者とは異なっていたの。『共依存病』は魂の片割れ、共依存と呼ばれている」

私たちを導くように、はるくんのお母さんは紛れもない真実を突きつけてくる。

「陽琉はね、秋斗と春陽の身体に宿っている魂の片割れ。魂の半身だったの。陽琉の身体だけに宿っている魂。だから、秋斗と春陽のように、『共依存病』の症状に悩まされることはなかった」
「それが……はるくんたちに纏わる『共依存病』の真実なんですね……」

私は改めて、はるくんのお母さんが語った真実を咀嚼する。
詰まるところ、はるくんは秋斗くんと春陽くんの身体に宿っている魂の半分――片割れだったということだ。

一つの魂が二つに分かれた存在。

合わせ鏡のような存在だったから、春陽くんとはるくんはあんなにも全てが似ていたのだろう。
でも、もはや、春陽くんにとって、はるくんは一番近くて一番遠い存在だ。

はるくんはもう、いないのだから――。

一年前の事故で命を失われた魂の半身、どうしても届かない遠い存在。
でも、このまま、『共依存病』が進行すれば、春陽くんもまた、その存在が消え失せてしまうだろう。

秋斗くんと春陽くん。
どちらも大切な存在だ。
もう二度と大切な人を失いたくない……。

私ははやる気持ちを抑えつつ、呼吸を整えてはるくんのお母さんに聞いた。

「……春陽くんの時間を取り戻す方法はないんですか?」
「秋斗と春陽が『共依存病』の進行で苦しくでいるのは知っている。春陽の時間が減っていることを聞いた時、正直、生きた心地がしなかった……」

はるくんのお母さんが辛そうに、私たちの顔を見る。
そして、真剣な表情で重い口を開く。

「春陽を救う方法はある。でも、そのためには代償が必要……」
「代償……」

はるくんのお母さんが発したその言葉が、私たちの肩に重くのしかかる。
それでも希望にすがりたかったねねちゃんは覚悟を決めて問いかけた。

「……はるくんを救うためにはどうしたらいいんですか?」
「春陽を救うためには……」

はるくんのお母さんはそこで言い淀むように、言葉を区切る。
気まずい沈黙が流れている。
確かに、春陽くんを救うための代償を言うのは躊躇われるだろう。


それでも、私は――。


秋斗くんと春陽くんが助かるなら、たとえ、この『命』が消えてもいい……。