「あの人が言ったとおり、『共依存病』の真実は知らないままの方がいいのかもしれない……。でも……もし、秋斗と春陽が真実を知りたいと願ったのなら、これから話すことをあの子たちに伝えてあげて……」
「……はい」

はるくんのお母さんの力強くてまっすぐな瞳。
でも、その奥には、言いようのない悲しみが潜んでいるのが見てとれた。

「しずちゃん、ねねちゃん。『共依存病』については、どのくらい知っている?」
「『共依存病』の主な症状は、二つの身体に同じ人格が宿っていること。身体は別でも、心は一つという一心同体の不思議な病気で、この病気に罹った人は一日置きに身体が入れ替わる。そして、いずれ、魂がどちらかの身体に紐付き、どちらかが死んでしまうという残酷な病気……だということは知っています」

私は以前、ねねちゃんに説明した症状をそのままなぞる。

「そう……。でも、陽琉たちは本来の『共依存病』の患者とは異なっていた」
「異なっていた?」
「秋斗と春陽と陽琉。あの子たちには……『三つ』の身体に同じ人格が宿っていたの」

私たちは息を呑んだ。
私たち以外の人が聞いても、何を言っているのか分からないだろう。
その言葉が示すあり得ない憶測に、私たちは震えた。
それはまるで――

「同じ人格……」

はるくんのお母さんの口から出た言葉に、私の表情が強張る。

「それって、はるくんと春陽くんは双子でもあり、同じ魂を持つ同一人物でもあるんですね」

声が震えそうになるのを我慢して、私は必死に自分を奮い立たせて言った。

春陽くんははるくんだ。
顔も声も性格も、ふたりが双子であり、同一人物であるという事実を嫌というほど証明している。
それなのに、『はるくんが重ねた時間』と『秋斗くんと春陽くんが重ねた時間』は、別の人生として確かに存在していた。

どういうことなんだろう?

それにもう一つ、腑に落ちない点がある。

「でも、はるくんは秋斗くんと春陽くんのように、一日置きに学校を休んだりすることもなかった。『共依存病』に罹った人は、一日置きに身体が入れ替わるはずなのに……」
「不思議だよねー」

理解が追いつかない。私とねねちゃんは混迷を深める。
『共依存病』の患者であるはずのはるくんはずっと、はるくんとしての人生を歩んできた。
恐らく、一日置きに身体が入れ替わることもなかったはずだ。

『共依存病』の患者であるはずなのにどうして?

その解を紐解くように、はるくんのお母さんは言った。