「ごめんなさい。覚えていないわよね。私たちが別れた時はまだ、赤ちゃんだったんだもの。やっぱり、あなたたち、三人を――兄弟を引き離すべきじゃなかった」
「兄弟……」

秋斗くんたちとはるくんは兄弟。
それは先程、予想していた真実だったけど、私は思わず、目の奥が熱くなってしまった。

「あなたたちは――」
「それ以上、言うな!」

はるくんのお母さんの言葉を遮って、秋斗くんたちのお父さんは声を荒げる。

「頼む、秋斗たちには話すな! 『共依存病』の真実は知らないままの方がいいんだ……!」

憤怒。そんな感情を自分が発露したことに驚きつつも、秋斗くんたちのお父さんは吐き捨てるように言った。
そして、神妙な面持ちで息子の名前を呼んだ。

「ここにはもう用はない。秋斗、行くぞ」
「ですが……」
「知るべきではないことだ」

強い断言によって、秋斗くんの後追いの言葉は遮られる。

「……はい」

秋斗くんは後ろ髪を引かれる思いで応えると踵を返し、私たちに深々と頭を下げてきた。

「篠宮さん、鳴海さん、今日は来てくれて本当にありがとうございます」
「え……う、うん」

私は展開についていけずに思わず、呆然としてしまう。

「え、ちょっと、待って! まだ、話は――」

はるくんのお母さんの声にも振り向かずに、秋斗くんたちはその場から立ち去ってしまった。

残されたのは私とねねちゃん。そして、はるくんのお母さん。

私とねねちゃんは申し合わせたように頷くと、はるくんのお母さんのもとに駆け寄り、ぺこりとお辞儀する。

「あの、こんにちは」
「はるくんのお母さん」

先程までの緊迫した空気など、どこ吹く風で私とねねちゃんは今か今かと言葉を待っている。
その様子に、はるくんのお母さんは思わず、表情を緩めた。

「もしかして、しずちゃんとねねちゃん?」
「はい」
「えへへ、お久しぶりです」

私とねねちゃんはふわりと花が咲いたかのように笑い合う。