私が目覚めたのはその直後だった。

「待って! はるくん、お願い、待って!」

私は思わず、叫んでいた。

「夢が終わったら、はるくんが消えちゃう……うぅ……」

途中で喉が詰まったようになって、後の言葉が続けられなかった。
必死に手を伸ばしても、そこには誰もいない。
突きつけられたのは残酷な現実だった。

家の外は朝の光で満ちている。
私はカーテンを開けて、その眩しさを部屋に取り込んだ。
澄んだ空気をゆっくりと胸に吸い込んで、机に置いてある小箱から、かけがえのない宝物――はるくんがくれたリボンを手に取る。

心が、もっと……太陽のようなはるくんと繋がっていたいと訴えていたから。

幸せな夢の余韻が、今も甘苦しく胸を締め付けている。

失ったはるくんの温かさ。
もう戻れない愛しい過去。

けれど、その延長線上に春陽くんと秋斗くんと過ごす今があるのだと改めて思う。

得られなかった輝き。
もう叶うことのない、はるくんとともに生きる眩しい未来。

けれど、それとは別の未来も、その延長線上にあるのだと今は思える。

もう二度と大切な人を失いたくない……。
――どうかどうか……このまま、春陽くんと秋斗くんが一緒に生きられますように。

今見た夢に、そのヒントがあるような気がして。
私は頬に伝っていた涙をそっと拭った。

はるくん、どうかどうか、私に大切な人たちを救う勇気をください。

私は祈るように机の上にリボンをそっと置く。
急いで支度をして、待ち合わせの場所へと向かう。
置き去りの寂しさを歌っているみたいに、はるくんからもらったリボンがふわりと揺れた。