「乗り越えたつもりだったの。何度も頭の中で整理をつけて、みんなの励ましを思い出して納得したつもりだった。でも、ちょっとした時に、はるくんの姿を探してるの……。だけど、もういないことにもやもやして、整理するのに時間がかかってる」
ねねちゃんの儚い笑顔が悲しみを描く。
「やっぱり、はるくんのことを忘れるなんて無理。忘れられるわけないの。はるくんのことが本当に大切だったから」
そう言うねねちゃんの目には光るものが浮かんでいた。
「今も……これまでも……これからも、はるくんとしずちゃんのことがずっとずっと、大切で堪らない……。もう二度と離ればなれになりたくない……」
「ねねちゃん……」
私はどうやってねねちゃんの涙を止めればいいのか分からなくて、頷くこともできずにいる。
辛くて苦しくて悲しくて、魂を……胸の奥を常に掻きむしられるのが現実なら。
私は暖かくて穏やかで安らぐ泡沫の夢の中の方がいい。
――そんなのはただの願望、いや逃避だって分かってる。分かってる、のだけど。
私は肩を、震わす。
止めどなく溢れてくるのは涙ではなく、恐怖――。
「雫」
「あ……」
刹那。そんな私の肩を抱き止めてくれたのは春陽くんだった。
温もりが感じられる。
春陽くんの体温が、彼の生きている証がそこにあった。
『しずちゃん、同じ質問を何度も占ってもらったらダメだからな』
いつか見た、強烈に脳裏に刻まれた昔日の記憶。
儚く、でも――絶対に忘れられない思い出。
私とねねちゃんは同じ人を――はるくんを大好きだった。
だから、思い出にするにはまだ、全然、時間が足りなくて。
私たちは今も、はるくんのことを大切に想っている。
「ねねちゃん……」
私は一瞬、それを口にするのを躊躇ったけど、覚悟を決める。
伝えなきゃ。伝えなきゃ。ねねちゃんに。
私のかけがえのない想い。
「私達は離ればなれなんかにならないよ。絶対に絶対に!」
「しずちゃん……」
「雫……」
力のこもった声音に、ねねちゃんだけではなく、春陽くんも驚いた顔をしていた。
「春陽くんと秋斗くん、二人を絶対に引き離させたりはしないから。どんな手を使っても、必ず二人を助けてみせるから」
流れる星に祈りを込めるだけで叶うとしたら、今は何を願うだろう。
ただ想うだけで楽しかった時期を過ぎて、少しの反応があるだけで幸せだった時期も越えて。
幾度となく甘い夢を描いてきた私の願いは少しずつ変わってきている。