とても信じられないことだった。
一年前、はるくん――つまり、春陽くんは車の玉突き事故に巻き込まれて亡くなったという。
テレビや新聞に取り上げられたその事故死が、世界の嘘であるはずがない。
でも、私の隣には驚愕の表情を滲ませる春陽くんがいる。

同じ声で容姿までがそっくりなんて、そんな偶然ってあるの?

あり得ないことだった。にわかには信じられない話だった。
それでも春陽くんは動揺を押さえつつ、尋ねた。

「ちょっと混乱している。人違いじゃねーの」
「そ、そうだよ。春陽くん、ちゃんと生きているよ。同じクラスにいるんだよ」

心が壊れそうなほど、音を立てて脈打っているのを感じながら私も同意する。

「しずちゃん。はるくんのこと、覚えていないの?」

ねねちゃんの声が震える。呼吸が乱れていた。

はるくん。

いままで漠然としていた大切な人の像が、いきなり輪郭を帯びてきたように思えた。
幽かな予感が私の中で膨らんでいく。
どこか似ている雰囲気を感じていた。
だから、初めて見た時から少しずつ惹かれていた。
でも、そんなことはあり得ない。
だって、彼は一年前に――

私は春陽くんを見た。
知っている『彼』と同じ顔がそこにある。

目の奥が熱くなる。体中の皮膚が鳥肌を立てて、感情の全てが震え出す。

「はるくん……」

あだ名を呼んだら、堪えていた涙が一粒、頬を流れた。