「なんでもねぇ!」

しかし伶龍は頬を赤く染め、ぷいっと私から顔を逸らしてしまった。

仮設テントに戻ってきて、伶龍が私を椅子に座らせてくれる。

「やればできるじゃないかい!」

すぐに祖母が労うように、私の肩をバンバン叩いた。

「あー、うん」

それになんともいえない気持ちで、笑顔で応える。
あれは私が上手くやったんじゃない、伶龍が私がやりやすいように動いてくれたおかげだ。

「この調子で次も頼むよ」

「……うん」

今日の調子なら、このあいだ負けたA級にだって勝てるかもしれない。
でも伶龍、急にどうしちゃったんだろう?
あんなに自分勝手で協力なんてしてくれなかった彼の変化には、いまさらながら戸惑う。

「伶龍」

「な、なんだよ」

祖母から声をかけられ、伶龍は警戒している。

「今までいったい、どこでなにをしていたんだい」

祖母が伶龍に尋ねたそれは、私も聞きたいところだ。

「……修行」

伶龍の声は酷く小さい。
さらに彼には似合わない内容すぎて、その場の全員が顔を見合わせていた。

「悪いね、伶龍。
もう一度、言ってくれるかい?」