そんな私たちを見て、祖母は呆れるようにため息をついた。
いつもなら大興奮の伶龍が静かだなんて、なにかの前触れか。
違う、それだけ伶龍は私に対して、腹の底から怒っているのだ。

「しゃんとしな、しゃんと!」

「いたっ!」

祖母が背中を思いっきり叩いてくるが、それに抗議する気も起こらない。

「大丈夫ですよ、きっと伶龍は翠様の気持ちをわかっています」

威宗の声が聞こえたのか、隣で伶龍が鋭くちっと舌打ちをする。

「……だといいんだけど」

おかげで威宗の励ましに曖昧に笑うしかできなかった。

――おおおぉぉぉぉぉぉん。

思ったよりも早く、唸り声が聞こえてくる。
それは低く地面を這い、空気をびりびりと震わせた。

「……来た」

小さく呟き、伶龍が腰を上げる。
遠く、蠢く足が見えたかと思ったら、どーん!と下から突き上げられるような衝撃が来て一瞬、身体が宙に浮いた。

「……参る」

鯉口を切る音がしたかと思ったら、伶龍が飛び出した。

「待って!」

私もそのあとを、慌てて追う。
伶龍はあっという間に見えなくなった。

「まっ、て……」