けれど彼はドアに頬杖をついて黙って窓の外を見るばかりで返事をしてくれない。

「あの、ね。
あの……」

戦いに挑む前になにか言わねばとは思うが、なにを言っていいのかわからない。
いまだに私の中では義務以外のどんな気持ちで穢れを祓えばいいのか答えは出ていなかった。

「その、えっと。
……ごめん」

とりあえず謝った。
それしかできなかった。

「それはなんに対する『ごめん』だよ」

視線は窓の外に向いたままだが、それでもようやく伶龍が返事をしてくれ、少しだけ頭が上がる。

「れ、伶龍が怒ってる、から……」

「……はぁーっ」

私の答えを聞いた途端、彼が大きなため息をつく。
おかげで肩がびくんと跳ねた。

「なんで俺が怒ってるか、わかってんのか?」

それには答えられず、じっと俯いて唇を噛む。
彼の視線はちっともこちらを向かない。

「そんなヤツに俺の背中は任せられねぇ。
俺は俺のやりたいようにやる」

伶龍の言うことはもっともすぎて、ますます落ち込んだ。
そのあとはずっとふたりとも無言だった。

詰め所でも伶龍は私と目すらあわせてくれない。

「なんだい、通夜みたいだね」