私のせいで彼らに苦労をさせている。
もっと私が上手くやっていれば。

「翠」

じっと彼らの話を聞いていたら、伶龍が私を探しに来た。

「しっ」

慌てて伶龍の口を塞ぐ。
彼らに私の存在を知られてはいけない。

「あんな出来損ないが咲夜(さくや)様の娘とか信じられないよな」

馬鹿にするように男たちが笑う。

「……出来損ない、か」

顔が笑顔の形に歪む。
その言葉が私の心に深く刺さった。
しかし任務もまともにこなせない私は、確かに母と比べて出来損ないだろう。

「おい、てめーら!」

沈んでいたところに大きな声が聞こえ、驚いて顔を上げる。
そこでは伶龍が勢いよく幕を上げ、向こうにいた人間に怒鳴っていた。

「ひっ」

いきなりの伶龍の登場に、男たちが短く悲鳴を上げる。

「今の話、聞き捨てならねぇな」

じろりと伶龍が、眼鏡の向こうから彼らを睨めつける。

「確かにコイツは出来損ないだ。
出来損ない中最高の出来損ないだ」

出来損ないと繰り返し、私を貶す伶龍にだんだん腹が立ってくる。
だいたい、彼が私の指示に従わず、手順を踏んでくれないからそう言われているのに。

「でもなぁ!」