はぁーっと柴倉さんが憂鬱なため息をつき、はらりと前髪が落ちた。
私が巫女デビューしてからその頭髪が薄くなったように見えるが……気のせいだということにしておこう。

ようやく柴倉さんから解放されて浄水のシャワーを浴びる。
ジャージに着替えて威宗が持たせてくれたほうじ茶で温まっていたら、仮設テントの幕向こうから声が聞こえてきた。

「また徹夜作業かよ」

「いい加減にしてほしいぜ、まったく」

たぶん、災害庁の役人だろう。
私がここにいるなんて知らないで、彼らの話は続いていく。

「刀のヤツ、態度わりぃしさ。
あれじゃ神様じゃなく安いチンピラだし」

「違いない」

おかしそうに笑う彼らに、そこは同意した。
黒の太縁スクエア眼鏡をかけるようになってから、ますます拍車がかかっている。

「刀も刀なら、巫女も巫女だしさー」

「そうか?
現役女子大生巫女とか萌えねぇ?
ちょっと勝ち気なところも可愛いし」

「その巫女様のせいで俺ら、しばらく家に帰れないんだぞ?」

「あー……。
それは、ヤダ」

情けなく言った男に失笑が起こり、大変申し訳ない気持ちになった。