そんなの、私だってわかっている。
でも、伶龍はいくら言ったところで私の言うことなんて聞いてくれない。
あーあ、なんでこんな刀選んじゃったんだろ。
我が儘で傍若無人、さらに俺様。
見た目だって全然私の好みじゃない。
後悔ばかりが頭の中をぐるぐる回る。

「伶龍。
気が逸るのはわかるが、ちーっとはまわりを見な。
翠が御符を射込む時間くらい、待てるだろ」

「……うっせー」

小さく悪態をつき、足を組んだ膝に頬杖をついて伶龍がそっぽを向く。

「……れいりょー」

「ひっ!
わ、わかったよ」

祖母に地の底から響いていそうな声で名を呼ばれ、小さく悲鳴を上げて伶龍は姿勢を正した。

「まあ、穢れを祓ったこと自体は褒めてやる。
よくやった」

にかっと祖母が笑い、その場の空気がようやく緩んだもの束の間。

「ええ、ええ。
穢れを祓えたのはよかったですけどね。
除染にいったい、いくらかかるのやら。
ええ、祓えずに穢れがまき散らす禍に比べたら、確かに費用は少ないですが。
それでも除染費用は特別計上が必要ですからね。
いったい何枚、書類を書いて会議を通さねばならないのか……」