などと思い、確実に折るためになにかないかあたりを見渡したが。

「そこまで!」

威宗が私たちのあいだに割って入った。

「伶龍。
眠りから覚め、身体を得たのは翠様のおかげです。
感謝しなさい」

「へーへー、そーですか」

聞く気がないのか伶龍はあぐらをかき、小指で耳をほじっている。

「それにこれからはあの方たちのために働くのです。
ご挨拶なさい」

先輩らしく威宗が促したものの。

「それ、本気で言ってんの?」

じろりと下から伶龍が威宗を睨み上げる。

「俺が戦うのは弱い人間のためだって、ここがいってる」

軽く手を握って親指を突き立て、それで伶龍は力強く自分の胸を叩いた。

「少なくともあんな狸親父や女狐のためじゃないっていうのわかる」

伶龍の手が参拝者たちを指す。

「なんだと!」

「まあ……!」

彼らは憤慨しているが、そこは伶龍と同意見なだけになんともいえない。

「あんたはどうなんだよ?」

「それは……」

とうとう威宗は俯いて黙ってしまった。
私だって伶龍の意見が正しいのはわかっている。
それでも、本音と建て前というものがあるわけで。

「はいはい!」