さて、どんな姿の男が現れるのか。
それは誰も、知らない。

「ふぅーっ」

吸い込んだ息をゆっくりと吐き出す。
目を開けて刀を見据え、左手親指で鍔を押した。
チャキリと鯉口を切る音がしんと静まりかえった場に大きく響く。
そのまま右手で柄を強く掴み、少しずつ刀を抜いていった。
徐々に刀身が現れていくにつれて、その前にぼんやりと人の姿が浮かび上がってくる。
それは次第に、はっきりとなっていった。

「伶龍、顕現いたしました」

私が刀を抜ききると同時に、影は完全に人の形になった。
その姿を見て、ほうと感嘆の声が上が参列者から上がる。
白い着物は今目覚めたばかりで寝間着のようなものだからいい。
私から見える後ろ姿ではツンツン短髪で、理想からはほど遠かった。
体格も小さそうだ。

「伶龍、ご挨拶を」

完全に目が覚めるように、勢いよく鞘へ刀を戻す。
その衝撃でか彼はびくりと身体を震わせた。
勢いよく顔が上がり、まさしく今起きたかのように大きく伸びをした。

「どこだ、ここ」

低い声を発し、彼がきょろきょろとあたりを見渡す。

「なんで俺、こんなにじろじろ見られてんの?」