寝過ぎた身体をほぐすように、彼は片手を肩に置き首を左右に揺らした。

「なんか見たことある光景だな」

立ち上がった彼が、こちらを振り返る。

「よう、翠。
……ん?
なんか翠にしては顔が違うな」

盛んに首を捻り、よく見えないのか彼は伶華にぐっと顔を近づけた。

「バカ。
私はこっちだよ」

それでようやく、彼の視線がこちらに向く。
つかつかと寄ってきた彼は、両手で私の顔を掴んだ。

「ああ。
こっちが翠だ。
それにしては老けたな」

相変わらずの言い草に、涙が浮いてくる。

「それだけ伶龍が長いこと寝ていたからだよ。
おはよう、伶龍」

「なんで翠、泣いてるんだ?」

私の目から涙がぽろりとこぼれ落ち、伶龍が困ったように後ろ頭を掻く。

「また伶龍に会えて、嬉しいからだよ」

手を伸ばし、彼に抱きついた。
懐かしい、彼の匂い。
もう二度と、会えないのだと思っていた。

「あー……。
わるい」

「本当だよ、この寝ぼすけ」

嬉しくて自然と笑顔になっていた。

「なー、こっちが翠なら、あれは誰なんだ?」

伶龍が伶華を指す。

「私と……伶龍の、娘だよ」