たぶん曾祖母は、私が見えているのに気づいたのだろう。

少しずつ、しかし確実に、蟲の穴は大きくなっていく。
そのあいだ、伶龍が、曾祖母が、春光が私を守ってくれた。
けれど曾祖母はやはり、そろそろ限界が近い。
早く、核を壊さなければ。

「あとすこ……しっ!」

放った矢が蟲の中へめり込み、ようやく核が露出した。

「伶龍!」

「おう!」

私のかけ声とともに、伶龍が穢れに向かって跳躍する。
御符をセットした矢をつがえ、弓をかまえた。

――おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーん!

矢を放った瞬間、ものすごい咆哮とともに穢れの足がこちらへと向かってくる。
伶龍が狼狽えた顔でこちらを見たが、黙って首を振った。
すぐに頷き、彼が引き締まった表情になる。

「ぐわっ!」

防ごうとしたが力が足らず、曾祖母と春光が足に吹っ飛ばされる。
足が私へと迫ってくるが、矢の射すぎで手からは血が流れ、もう弓を引く力すら残っていない。

……ああ。
今度こそ死ぬのかな。

遙か先にいる、伶龍へ視線を向ける。
そこでは泣き出しそうな表情で彼が、核を切るところだった。

……まさか、核が三つあるとかないよね。