「ホワイトクリスマスだね」

「そうだな」

ふたり、顔を見合わせて笑いあう。

「……翠。
俺が絶対に、死なせねぇ」

真剣な顔をした伶龍の手が、そっと私の頬に触れる。

「ありがとう。
でも、伶龍も死なないでね」

「わかってる」

じっと、レンズ越しに伶龍と見つめあった。
ゆっくりと傾きながら彼の顔が近づいてきて、目を閉じた――瞬間。

――うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーん。

不気味な唸り声がびりびりと空気を震わせた。

「……来たな」

ぱっと伶龍が私から離れる。
その目はすでに、臨戦態勢になっていた。
遙か遠くに、空までに届くほど長い穢れの足が見えてくる。
すぐに祖母たちも飛び起きてきた。

「準備はいいかい、アンタたち」

「おう!」

「はっ!」

伶龍と威宗が刀に手をかけ、腰をためる。
私も勢いよく、羽織っていた防寒具を脱ぎ去り、弓を手に取った。
曾祖母と春光は万が一の時までお留守番だ。

「いくよ!」

祖母の声を合図に、勢いよく駆け出す。
いくらも走らないうちに穢れの本体が見えてきた。
A級も大きかったが、大穢れはさらに大きい。