彼の腕の中で、こくんとひとつ頷いた。

「翠は母親を殺した悪いヤツだ。
そんなヤツは穢れ退治にその身を捧げ、死ぬまで穢れを祓うしかない。
この先一生、その役目にこの身を捧げよ。
俺も付き合ってやる」

きゅっと私を抱き締める彼の腕に力が入った。
温かい彼の体温に、ずっとなくならなかったしこりが溶けていく。

「伶龍は付き合ってくれるんだ?」

「ああ。
俺はオマエの刀だからな」

小さく笑った彼の手が、私の目尻を拭う。

「翠の命が尽きるそのときまで、俺が翠を守ってやる。
だから大穢れだろうとなんだろうと、安心していい」

じっと私を見つめる、艶やかに光る瞳に揺るぎはない。
その目を見ていると温かいものが私の胸を満たしていった。

「ありがとう、伶龍」

こんなに私を思ってくれる刀がパートナーで、私は幸せ者だ。
伶龍を選んでよかったと、心の底から思う。

「……伶龍」

じっと、彼を見つめた。
伶龍の手が、そっと私の頬を撫でる。
そのまま――。



……歌が、聞こえる。
酷く優しくて、同時に泣きたいほど切ない歌が。

「目が覚めたのか」