それでもうまいと言ってもらえ、ほっとして私も口に運ぶ。
伶龍は甘いものが好きみたいだから、甘めに作って正解だったな。

「うん。
うまかった、ごちそうさん」

口端についたパイのカスを伶龍は拭った。

「残りはどうするんだ?」

彼の目が残りのパイへと向く。
18センチ型で焼いたので、まだかなり残っていた。

「大ばあちゃんと春光でしょ、ばあちゃんと威宗も食べると思うし……」

そのつもりで六等分した。
なのに。

「俺が全部食う!」

「あっ!」

ぱっと伶龍がパイの皿を奪う。

「独り占めしないの!」

「ヤだねー」

「ちょっ、伶龍!」

そのまま彼は皿を抱き抱えるようにして逃げていった。

「もうっ!」

怒りながらも悪い気はしない。
食べるまではあんなに疑っていたのに、そんなに美味しかったのかな?
伶龍ってけっこう、子供っぽいところがあるよね。
そういうところが可愛いとか言うと、怒っちゃうんだろうな。

「あ、そうだ」

クリスマスとか伶龍、喜びそうだな。
ちょっと計画、しちゃおうかな。



その日の相手は、私たちが負けたA級だった。