なおも伶龍は悩んでいて、ムッとした。

「そこまで言うならもう、食べなくていいよ。
大ばあちゃんと春光と食べるから」

彼の目の前から、パイののったお皿を取り上げる。

「あっ。
食う!
食うから!」

すぐに伶龍が取り返そうと縋ってきて、ちょっとだけ気分が晴れた。

パイを切り分け、紅茶を淹れてやる。

「見た目はうまそうなんだよなー」

「……そんなに言うなら食べなくていいって」

お皿を持ち上げ、仔細にパイを眺めている伶龍を上目遣いでジトッと睨む。

「せっかく翠が作ってくれたんだから、食うに決まってるだろ!」

また取り上げられては堪らないと、伶龍は腕の中にお皿を抱き込んだ。
皿にフォークを突き刺して持ち上げ、大きな口を開けて彼はかぶりついた。

「もっと行儀よく食べなさいよ……」

つい、口から苦情が出る。

「食えば一緒だろ」

「それはそうだけど……」

彼に行儀など求めるほうが間違っているのはわかっている。
それでもこんなに雑に食べられて複雑な気持ちだ。

「意外とうまいな」

軽い調子で言い、さらに残りの半分を伶龍が口に入れる。

「意外は余計だよ」