もしかしてハロウィンの真実よりも、海外に行けないのがショックだったのかもしれない。

「伶龍」

「なんだ?」

彼は窓に肘をつき、ふて腐れ気味に流れていく景色を見ている。

「今すぐは無理だけど。
私に子供が生まれて、その子が巫女になって。
全部任せられるようになったら一緒に、海外旅行へ行こうよ」

きっとその頃なら、許可だって出るはず。
曾祖母だって外交の一環だったが、祖母が巫女になってから何度か海外へ行っている。

「そうだな、楽しみだ」

伶龍のこちら側の手が伸びてきて、手探りで私の手を握る。
私もそれを握り返した。
最低でも二十年ほど先の話だけれど、私もそのときが酷く楽しみだった。



ハロウィンはカボチャパイを作った。
……私が。

できあがったパイを不審物でも見るような目で伶龍が見つめる。

「……食えるのか?」

「失礼な!
私だって料理くらいできるよ!」

間髪入れず思いっきりツッコむ。
自慢じゃないが高校生時代、憧れの先輩に手作りお菓子の差し入れくらいした。
まあ、フラれたけどね。

「しかし、食えるのとうまいのは別問題だからな……」