「…あぁ、そっか」
何となく思い出してきた。
生前整理が済んで、一息ついた時、息が苦しくなってそのまま…。
階段を上るときカンカンと音を立てていたのは幻聴だったのだ。
生きていた頃に聞き慣れた音を、無意識に頭の中で鳴らしていただけだった。
「俺はね、このマンションの近くで事故で死んだんだけど、
俺と同じ幽霊なのに、自覚しないまま普通に暮らしてる人がいたから気になっちゃって」
「事故…」
「トラックでドカーンとね」
「あ…、ニュースでやってた…?」
「そうそう。俺のニュースをまじまじと見てたのも気になった理由かな」
あの日眠ったと思っていたのは、息を引き取る時だったのか。