本当は入院が必要だと言われたが拒否して、自宅で静かに過ごしている。

仕事も辞めて、生前整理も済ませた。

案外、一生を終えるための準備というのは簡単に済ませられるものだ。

(私の人生が空っぽだっただけかもしれないけど)

そんなこんなあって、癌と言われて今日で一ヶ月とちょっとが経った。

特に生きている間にしたかったことも、行きたかった所もなく、自宅でずっと過ごしているとやはり色々と考えるもの。

自分の人生は何の意味も成さないものだったな、と。

このままいくと鬱になりそうだったので、気分転換に屋上に行くと〝彼〟がいたのだ。

いつも先に来て、屋上の手すりに腰かけている。

落ちるよ、と声を掛けたのが最初だった気がする。