でもその事故のニュースを見てから変わったことがある。

屋上にはある人が現れるようになったのだ。

その人に会うためというわけではないが、いつもの習慣で住んでいるマンションの屋上への階段をカンカンと音を立てながら上る。

屋外にある階段はアルミで出来ている為、静寂な夜に良く響く。


…きっと、今夜もあの人は先に来ていることだろう。

最後の段を上り切って屋上を見渡すと、やはりそこには先客がいた。

私が来たことに気づくと振り向いてヘラッと笑う。

「今日も来たんだねぇ」

「そちらこそ」

語尾に間延びするのは癖らしい。

でも間延びしない時もある。