『2月19日。昨日とは打って変わって薄暗い天気。私の周りでは頭痛いって言っている子が続出したよ。静兄は大丈夫?

 静兄と沢山話したいけど面会が出来ないって言われちゃったから、手紙送るね。届いてたら嬉しいな。

 昔話、一緒にしよ。…………』


 手紙を綴り始める。兄のような恋人の、夏乃静へ。
 余命一週間の君へ。

 難病を患う静兄は二日前に大きく体調を崩し、一年あった彼の残り時間が、一週間という短い時間となった。

 静兄の居る世界を生きられるのもあと一週間。

 その短い期間の中で何ができるのか。そう考えた時、面会も出来ない私は手紙を送るという事しか思い浮かばなかった。

 幸せに溢れる昔の話。それを便箋に書いていく。
 彼との始まりの記憶を、丁寧になぞるように文字を綴っていく。


 静兄にはまだ、話したい事が沢山あるんだよ。