僕は翌日から学校に行かずに少しでも長く早月といることにした。学校の先生は色々と察したのか、「学年末試験だけは来なさい」とだけ言われた。出席日数は足りていたし、おちゃらけキャラと言えども素行そのものはよかったので大目に見てくれた。
教師は許してくれても、親はそうとはいかなかった。今まで親に反抗したことはなかったけれど、初めて反抗した。
「僕が十八歳になったら、結婚したい人がいる。その人が今、病気で入院してるんだ」
この気持ちに嘘はなかった。僕が十八歳になるまであと一年と四か月。奇跡が起こってそれまで早月が生きる未来を僕だけは信じる。
「成績絶対落とさないから頼むから好きにさせてくれよ。成績落ちたら、その時は監禁でもなんでもすればいい」
親に啖呵を切って家を飛び出した。大丈夫だ。僕ならできる。
その日から僕は、病院の面会時間が終わると時間の許す限り深夜まで勉強をした。幸いにもクラスのグループトークにはノートを載せてくれる優しい人たちがいた。ところどころ間違っている箇所があっても、お互いに教え合う優しい空間があった。
「昴、本当に学校大丈夫なの? 留年とかしない?」
早月に心配されてしまった。
「平気だよ。こういうときだけ年上ぶるなって」
実は一年高校の入学が遅れていると聞いたとき、僕たちは一つ約束した。恋人同士になるんだから、敬語は使わない。僕たちは対等な恋人同士だ。
「平気平気。元々推薦使うつもりないから出席日数気にしてないし。試験もたぶん余裕」
「おー、さすが学年首席」
早月が大げさに拍手をした。
「こういう風に自信持てるようになったのも、早月のおかげだよ」
「昴、ちょっと前まで自虐ひどかったもんね」
「そうかも」
「そのことで私、一つ謝らないといけないんだけど、いいかな?」
早月が遠慮がちに切り出した。
「昴、私のこと覚えてない?」
「覚えてるも何も、早月は今ここにいるだろ?」
まったく話がつかめなかった。
「私、小学校の時は今とは違う名字だったんだ。仁科はお母さんの旧姓で、小学校卒業までは佐藤早月で通したんだけど、聞き覚えない?」
佐藤。よくある苗字だ。大体どのクラスにも佐藤はいる。アメリカにいた時ですら数少ない日本人の知り合いに佐藤さんがいた。
「いや、あんまり」
「じゃあ、佐藤隼兎って覚えてる?」
ドクンと心臓が鳴った。僕が救えなかった親友の名前だ。まさか。隼兎は家に友人を招きたがらなかったし、お姉さんがいるとは知っていたが僕は転校生だったので友達の詳しい兄弟姉妹の事情までは知らなかった。
「もしかして……」
「うん。弟だよ」
あまり仲良くないお姉さんがいると聞いていたが、一つ上ということまでは知らなかった。同じ小学校に通っていたということは、顔を合わせたこともあるのだろうか。
「リレー、一緒に走ったの覚えてない?」
リレー、一つ上、足の速い女の子。ショートヘアに三組のクラスカラーである青い鉢巻を巻いていた、僕よりも背が高い女の子の後ろ姿だけは鮮明に覚えていた。後ろ姿ばかり見ていたから、顔はよく覚えていないし、佐藤というよくある名前だったのなら当時隼兎のお姉さんだと気付かなかったのも、忘れてしまったのも無理はない。
僕が初めて負けた人。敵わないと思った人だ。次は負けないぞ、とも言えなかったほどに。
「早月は、最初から気づいてた?」
「ううん。全然。昴、背高くなってたし、かっこよくなってたし。ただ、隼兎がね」
「隼兎、今元気にしてる?」
隼兎の名前を聞いて、僕は早月の話を遮って尋ねた。ずっと心残りだった。僕が助けられなかった親友はあの後どうなってしまったのか。
「うん。とっても。美術部で楽しくやってるみたい」
「よかった……」
隼兎は無事に立ち直れた。安心して全身の力が抜けた。五年分の後悔が、一気に外れた。
「ほら、思春期って姉弟のことうざくなるじゃない? 隼兎がインドアで私がアウトドアだから、性格も正反対だし。特に一個違いってそういうもんなんだよね」
早月が隼兎の話を始めるが、僕は一人っ子なので姉弟の機微はよくわからなかった。でも、そういうものなのだろう。
「ただ、中三で私が病気になったときに、離婚したお父さんも隼兎もみんな集まって、その時に隼兎と腹割って話したんだよね。隼兎は目立った特技のある私が嫌いだったけど後から考えると羨ましいだけだったって。あの頃は私も進路とか陸上とか、親のこととかで悩んでていっぱいいっぱいだったんだよね。私は走ってれば結構ストレス発散できるタイプだったけど、隼兎のことまで気が回らなかった。今考えると、私も嫌われてるの薄々気づいてて苦手意識はあったかも。で、お互いに謝ってそこから連絡とるようになったんだ」
当時、隼兎も早月も小学生だった。どちらも悪くない。二人とも必死だった。だから、わだかまりもとけたのだろう。
「で、高校で天文部に入ったときに昴の名前言ったら、ものすごい勢いで食いついてきたから写真勝手に送っちゃった。そしたら、隼兎すぐに気づいたんだよね」
当時の面影なんてほとんど残っていないのに、良く気付いたものだ。
「親の離婚の時にずっと相談乗ってくれてた子だってその時に聞いて。選抜リレーの選手だったから、姉ちゃんも会ったことあるはずだよって言われて、あの好戦的な子かーって」
「やめてくれよ、恥ずかしい」
のちに好きになる女の子に勝負を申し込んであろうことか負けた。男として恥ずかしすぎる。
「機会があったらありがとうって伝えて、って言われてたんだけど、お姉ちゃんだって言ったら年上だってばれちゃうじゃない? だから、隼兎には申し訳ないけどちょっと保留にしてたんだ。時々、まだ若作りしてんの? ってからかわれる」
ずいぶんと仲がよさそうだ。隼兎は自力で立ち直ったのだろう。僕は何もできなかったのに、隼兎の記憶の中で僕は美化されているようだ。
「でも、僕何もできなかったよ。お礼言われるようなこと、何もしてない」
「やっぱり、救えなかった友達って隼兎のことだったんだね」
僕は頷いた。僕は「友達の相談に乗った」とは言ったが、「友達のために泣いた」とは言っていない。早月は知っていたのだ。
「ごめんね。それならもっと早く言えばよかった。隼兎は昴が救ってあげた子の方にカウントされてると思ってたから。救えなかった子は別の子なのかなって思って。ただ、時々話がかみ合わなくて、もしかしてって思った」
僕は救えなかった隼兎の詳しい事情までは話していない。共通の知り合いであるかどうかにかかわらず、他人のプライバシーは話すべきではないと思ったからだ。お互いに隠し事をしていたから、早月は絶妙な違和感を覚えたのだろう。
「隼兎ね、転校先の小学校ですぐに友達出来たんだって。昴、転校生だったんだよね? 転校生だった昴が、自分のために泣いてくれるほどの大親友になってくれたから、きっと転校先でもそういう友達ができるって心の支えになってた……って、伝えてって言われたんだけど、遅くなってごめんね。死ぬ前に、これだけは絶対伝えなきゃって思って……」
気づけば僕の目から涙があふれていた。
「教えてくれてありがとう」
無力な僕でも誰かの支えになれる。それを早月は二度も教えてくれた。
「隼兎の連絡先、聞いてもいいかな」
早月は快く連絡先を教えてくれた。
「隼兎からその話聞いて、昴にならお願いできるかなって思ったんだ。信用してる肉親の一番信頼する人なら信頼できるかなって」
今まで点だったものが、星座のように全部線でつながった。
「隼兎が縁を繋いでくれたのかな」
「それが最初の理由だけど、そういう目で昴のこと見てたら、やっぱりこの人なら信頼できるって私自身も思ったよ。馬鹿のふりしてるけど、言葉の端々から頭の良さにじみ出てるし。悪ぶってるけど、困ってる人のこと反射的に助けちゃう優しい人だし」
こうして早月が僕を肯定してくれたから、僕は自己肯定感を取り戻せたのかもしれない。僕の人生に意味をくれた早月のために、僕は何ができるだろう。
面会時刻を過ぎたあと、隼兎に電話をかけた。隼兎に何度もありがとうと言われた。隼兎は全部知っていた。年上だと僕が知ったことも、僕たちが付き合っていることも。
「隼兎はさ、お姉さんに会いに来ないの?」
新幹線の距離とはいえ、もうすぐ春休みだ。
「何言ってんだよ。姉ちゃんは俺といるより、昴と二人きりがいいに決まってるだろ。ていうか、姉ちゃんがそう言ってたし」
「なっ……」
突然の発言に僕は焦った。
「恋愛マスターなんだから、女心くらいわかってやれよ」
おまけに遠い昔の二つ名まで持ち出された。
「そういう隼兎はどうなんだよ。彼女、いるの?」
混乱した僕は苦し紛れに言い返した。
「内緒」
「その言い方、お姉さんそっくり」
「お姉さんじゃなくて、早月って呼んでるくせに」
「なっ……からかうなよ!」
一体どこまで隼兎に話したんだ。これは明日早月とじっくり話をしないといけない。
「姉ちゃんのこと、よろしくな」
一通り笑った後、隼兎はまた真剣な声で俺に言った。
「姉ちゃんの恋人が昴でよかったよ。ありがとな」
「僕も幸せだよ」
「姉ちゃんに伝えとく」
「やめろ」
それくらい自分で言うぞ、弟よ。そう心の中で呟いた。
教師は許してくれても、親はそうとはいかなかった。今まで親に反抗したことはなかったけれど、初めて反抗した。
「僕が十八歳になったら、結婚したい人がいる。その人が今、病気で入院してるんだ」
この気持ちに嘘はなかった。僕が十八歳になるまであと一年と四か月。奇跡が起こってそれまで早月が生きる未来を僕だけは信じる。
「成績絶対落とさないから頼むから好きにさせてくれよ。成績落ちたら、その時は監禁でもなんでもすればいい」
親に啖呵を切って家を飛び出した。大丈夫だ。僕ならできる。
その日から僕は、病院の面会時間が終わると時間の許す限り深夜まで勉強をした。幸いにもクラスのグループトークにはノートを載せてくれる優しい人たちがいた。ところどころ間違っている箇所があっても、お互いに教え合う優しい空間があった。
「昴、本当に学校大丈夫なの? 留年とかしない?」
早月に心配されてしまった。
「平気だよ。こういうときだけ年上ぶるなって」
実は一年高校の入学が遅れていると聞いたとき、僕たちは一つ約束した。恋人同士になるんだから、敬語は使わない。僕たちは対等な恋人同士だ。
「平気平気。元々推薦使うつもりないから出席日数気にしてないし。試験もたぶん余裕」
「おー、さすが学年首席」
早月が大げさに拍手をした。
「こういう風に自信持てるようになったのも、早月のおかげだよ」
「昴、ちょっと前まで自虐ひどかったもんね」
「そうかも」
「そのことで私、一つ謝らないといけないんだけど、いいかな?」
早月が遠慮がちに切り出した。
「昴、私のこと覚えてない?」
「覚えてるも何も、早月は今ここにいるだろ?」
まったく話がつかめなかった。
「私、小学校の時は今とは違う名字だったんだ。仁科はお母さんの旧姓で、小学校卒業までは佐藤早月で通したんだけど、聞き覚えない?」
佐藤。よくある苗字だ。大体どのクラスにも佐藤はいる。アメリカにいた時ですら数少ない日本人の知り合いに佐藤さんがいた。
「いや、あんまり」
「じゃあ、佐藤隼兎って覚えてる?」
ドクンと心臓が鳴った。僕が救えなかった親友の名前だ。まさか。隼兎は家に友人を招きたがらなかったし、お姉さんがいるとは知っていたが僕は転校生だったので友達の詳しい兄弟姉妹の事情までは知らなかった。
「もしかして……」
「うん。弟だよ」
あまり仲良くないお姉さんがいると聞いていたが、一つ上ということまでは知らなかった。同じ小学校に通っていたということは、顔を合わせたこともあるのだろうか。
「リレー、一緒に走ったの覚えてない?」
リレー、一つ上、足の速い女の子。ショートヘアに三組のクラスカラーである青い鉢巻を巻いていた、僕よりも背が高い女の子の後ろ姿だけは鮮明に覚えていた。後ろ姿ばかり見ていたから、顔はよく覚えていないし、佐藤というよくある名前だったのなら当時隼兎のお姉さんだと気付かなかったのも、忘れてしまったのも無理はない。
僕が初めて負けた人。敵わないと思った人だ。次は負けないぞ、とも言えなかったほどに。
「早月は、最初から気づいてた?」
「ううん。全然。昴、背高くなってたし、かっこよくなってたし。ただ、隼兎がね」
「隼兎、今元気にしてる?」
隼兎の名前を聞いて、僕は早月の話を遮って尋ねた。ずっと心残りだった。僕が助けられなかった親友はあの後どうなってしまったのか。
「うん。とっても。美術部で楽しくやってるみたい」
「よかった……」
隼兎は無事に立ち直れた。安心して全身の力が抜けた。五年分の後悔が、一気に外れた。
「ほら、思春期って姉弟のことうざくなるじゃない? 隼兎がインドアで私がアウトドアだから、性格も正反対だし。特に一個違いってそういうもんなんだよね」
早月が隼兎の話を始めるが、僕は一人っ子なので姉弟の機微はよくわからなかった。でも、そういうものなのだろう。
「ただ、中三で私が病気になったときに、離婚したお父さんも隼兎もみんな集まって、その時に隼兎と腹割って話したんだよね。隼兎は目立った特技のある私が嫌いだったけど後から考えると羨ましいだけだったって。あの頃は私も進路とか陸上とか、親のこととかで悩んでていっぱいいっぱいだったんだよね。私は走ってれば結構ストレス発散できるタイプだったけど、隼兎のことまで気が回らなかった。今考えると、私も嫌われてるの薄々気づいてて苦手意識はあったかも。で、お互いに謝ってそこから連絡とるようになったんだ」
当時、隼兎も早月も小学生だった。どちらも悪くない。二人とも必死だった。だから、わだかまりもとけたのだろう。
「で、高校で天文部に入ったときに昴の名前言ったら、ものすごい勢いで食いついてきたから写真勝手に送っちゃった。そしたら、隼兎すぐに気づいたんだよね」
当時の面影なんてほとんど残っていないのに、良く気付いたものだ。
「親の離婚の時にずっと相談乗ってくれてた子だってその時に聞いて。選抜リレーの選手だったから、姉ちゃんも会ったことあるはずだよって言われて、あの好戦的な子かーって」
「やめてくれよ、恥ずかしい」
のちに好きになる女の子に勝負を申し込んであろうことか負けた。男として恥ずかしすぎる。
「機会があったらありがとうって伝えて、って言われてたんだけど、お姉ちゃんだって言ったら年上だってばれちゃうじゃない? だから、隼兎には申し訳ないけどちょっと保留にしてたんだ。時々、まだ若作りしてんの? ってからかわれる」
ずいぶんと仲がよさそうだ。隼兎は自力で立ち直ったのだろう。僕は何もできなかったのに、隼兎の記憶の中で僕は美化されているようだ。
「でも、僕何もできなかったよ。お礼言われるようなこと、何もしてない」
「やっぱり、救えなかった友達って隼兎のことだったんだね」
僕は頷いた。僕は「友達の相談に乗った」とは言ったが、「友達のために泣いた」とは言っていない。早月は知っていたのだ。
「ごめんね。それならもっと早く言えばよかった。隼兎は昴が救ってあげた子の方にカウントされてると思ってたから。救えなかった子は別の子なのかなって思って。ただ、時々話がかみ合わなくて、もしかしてって思った」
僕は救えなかった隼兎の詳しい事情までは話していない。共通の知り合いであるかどうかにかかわらず、他人のプライバシーは話すべきではないと思ったからだ。お互いに隠し事をしていたから、早月は絶妙な違和感を覚えたのだろう。
「隼兎ね、転校先の小学校ですぐに友達出来たんだって。昴、転校生だったんだよね? 転校生だった昴が、自分のために泣いてくれるほどの大親友になってくれたから、きっと転校先でもそういう友達ができるって心の支えになってた……って、伝えてって言われたんだけど、遅くなってごめんね。死ぬ前に、これだけは絶対伝えなきゃって思って……」
気づけば僕の目から涙があふれていた。
「教えてくれてありがとう」
無力な僕でも誰かの支えになれる。それを早月は二度も教えてくれた。
「隼兎の連絡先、聞いてもいいかな」
早月は快く連絡先を教えてくれた。
「隼兎からその話聞いて、昴にならお願いできるかなって思ったんだ。信用してる肉親の一番信頼する人なら信頼できるかなって」
今まで点だったものが、星座のように全部線でつながった。
「隼兎が縁を繋いでくれたのかな」
「それが最初の理由だけど、そういう目で昴のこと見てたら、やっぱりこの人なら信頼できるって私自身も思ったよ。馬鹿のふりしてるけど、言葉の端々から頭の良さにじみ出てるし。悪ぶってるけど、困ってる人のこと反射的に助けちゃう優しい人だし」
こうして早月が僕を肯定してくれたから、僕は自己肯定感を取り戻せたのかもしれない。僕の人生に意味をくれた早月のために、僕は何ができるだろう。
面会時刻を過ぎたあと、隼兎に電話をかけた。隼兎に何度もありがとうと言われた。隼兎は全部知っていた。年上だと僕が知ったことも、僕たちが付き合っていることも。
「隼兎はさ、お姉さんに会いに来ないの?」
新幹線の距離とはいえ、もうすぐ春休みだ。
「何言ってんだよ。姉ちゃんは俺といるより、昴と二人きりがいいに決まってるだろ。ていうか、姉ちゃんがそう言ってたし」
「なっ……」
突然の発言に僕は焦った。
「恋愛マスターなんだから、女心くらいわかってやれよ」
おまけに遠い昔の二つ名まで持ち出された。
「そういう隼兎はどうなんだよ。彼女、いるの?」
混乱した僕は苦し紛れに言い返した。
「内緒」
「その言い方、お姉さんそっくり」
「お姉さんじゃなくて、早月って呼んでるくせに」
「なっ……からかうなよ!」
一体どこまで隼兎に話したんだ。これは明日早月とじっくり話をしないといけない。
「姉ちゃんのこと、よろしくな」
一通り笑った後、隼兎はまた真剣な声で俺に言った。
「姉ちゃんの恋人が昴でよかったよ。ありがとな」
「僕も幸せだよ」
「姉ちゃんに伝えとく」
「やめろ」
それくらい自分で言うぞ、弟よ。そう心の中で呟いた。