ホームズとポアロ 〜アンソレイエ学園事件簿〜

結論から言えば、二人とも半分正しかった。

美術準備室からは、展示ケースの縁に付着していたのと同種の保存用粉末が見つかった。
一方、化学実験室では、電子ロックのログを一時的に改竄可能な試験用端末が存在していた。

だが、決定打はない。

「どちらも可能なだけだ」

リベルタは腕を組む。

「ええ。そして決め手がない状況こそ、誰かの意図」

アルテミスは静かに言う。

セレネが小さく呟いた。

「誘導ってこと?」

ティリットが頷く。

「犯人は、俺たちに推理させている」

その瞬間、四人の視線が交わった。

三日前の対立は、もうない。

あるのは、同じ違和感。

「ヒントはもう見ただろう?」

あの言葉。

リベルタがゆっくりと口を開く。

「展示ケースの縁の粉末。あれはわざとだ」

「ええ。香りも強すぎた」

アルテミスが続ける。

「本当に隠すなら、もっと微量でいい」

セレネが息を飲む。

「つまり、私たちに分かるように置いた?」

ティリットが低く言う。

「問題は、なぜそこまで自信があるかだ」

リベルタの目が細くなる。

「三日という制限時間」

アルテミスが続ける。

「監視カメラの死角」

セレネがはっとする。

「死角って、誰が把握してるの?」

四人は同時に、同じ名前を思い浮かべた。