ホームズとポアロ 〜アンソレイエ学園事件簿〜

その日の放課後、四人は旧資料室前に来ていた。

重厚なオーク材の扉には、封鎖を示す赤いテープが幾重にも貼られている。
警備員が一人、所在なさげに立っていた。

「立入禁止のはずだが」

リベルタが淡々と言う。

「本来はね」

アルテミスは封鎖テープを指先で軽くつまみ、視線を巡らせた。

「でも、私たちは呼ばれた側でしょう?」

背後から低い声が落ちる。

「理事長の許可は出ている」

ティリットがスマートフォンを掲げた。画面には、電子署名付きの許可通知。

「調査協力。四名限定」

「本当に限定なのね……」

セレネは小さく呟き、資料室の扉を見つめる。

鍵は電子式。
しかし、その周囲に傷はない。

リベルタの視線が鋭くなる。

「こじ開けた形跡はない」

「つまり、内部犯行?」

セレネが息を呑む。

「断定は早い」

アルテミスが静かに言う。

「電子ログは?」

ティリットが端末を操作する。

「異常なし。記録上は、昨夜二十三時三十二分に最終施錠」

「資料が消えたのは今朝発覚よね」

「ええ。担当教授が八時に」

アルテミスは目を閉じ、ゆっくりと呼吸した。

「鍵は壊されていない。ログにも異常はない。なのに中身だけ消えた」

リベルタは即答する。

「複製鍵」

「電子式よ?」

「なら認証情報の複製」

「ログが残るわ」

「残らない方法もある」

空気が、また火花を帯びる。

セレネが両手を上げた。

「はいはい、推理合戦は中に入ってから!」

ティリットが扉のロックを解除する。

静かな電子音。

重い扉が、ゆっくりと開いた。