懐中時計と日誌を手に入れた翌日。
四人は再び、図書室の奥に集まっていた。
机の上には、日誌の写しと校内の人物リスト、手帳に走り書きされたメモが広がっている。
「ねえ、この若き教師って誰なのか、記録には書かれていなかった?」
セレネが問いかけると、アルテミスは日誌の一節を指差した。
【彼は真実を守るために、告発の記録を記した時計を残し、学園を去った。理事長もそれを望まなかった。私も名を記すことは避けた】
「やっぱり、名前は伏せられてる。でも、何か気になる表現があった」
リベルタが続ける。
「日誌に彼と書いてある、つまり男性。そして、学長と理事が告発を望まなかった。となると、当時の理事長周辺に関係していた人物のはず」
ティリットが顔をしかめる。
「でも、百年近く前の話なんだろ?どうやって今に繋がるんだ?」
そのとき、図書室の扉が開いた。
「あなたたち、またここにいたのね」
姿を見せたのはアレクシアだった。
四人は一瞬身構えるが、彼女は穏やかな声で言った。
「もう隠すつもりはないの。少しだけ、昔話をさせて」
静まり返った部屋に、彼女の言葉が落ちていく。
「C.L.ヴァレンタインには、信頼していた教え子がいたの。その人物は後に、学園で講師となり、理事会の腐敗に気づいてしまった。そして記録を残そうとしたけれど、その告発は内部崩壊の恐れを理由に握り潰されたの」
「その教師が、時計を残した人物?」
アルテミスが尋ねると、アレクシアはゆっくり頷いた。
「名前はオスカー・ヘイル、私の父よ」
衝撃が走った。
アレクシアのまなざしには、誇りと悔しさの入り混じった光があった。
「私は父の無念を知っていた。けれど、それを表に出す覚悟はなかった。長い間、学園の歴史は静かに守られるべきだと思っていたの。でも、誰かがこの記録を動かした。だから今、あなたたちに託すしかないの」
「動かしたのは誰ですか?」
リベルタが問い詰めると、アレクシアはためらいがちに答えた。
「おそらく現在の学長、カイ・エルバート。彼の曾祖父は、当時の理事長だった。そして彼はこの記録の存在を知っている。何度か、私にもそれとなく確認してきたことがあるの」
「つまり、家名の名誉を守るために、今でも真実を封じようとしている」
セレネが低く呟いた。
「それだけじゃないかもしれないわ」
アルテミスが、懐中時計を手にして続けた。
「この記録が表沙汰になれば、学園の信頼も、寄付金も、組織そのものも揺らぐ。誰かが、それを防ごうとしている。逆に誰かは、それをあえて暴こうとしてる」
「真実を隠したい者と……暴きたい者……」
ティリットがつぶやく。
その時、図書室の外から、誰かが足早に近づく音がした。
「見つけたぞ、君たちに話がある」
扉が開いて現れたのは、学長のカイ・エルバートだった。
エルバートの手には、一通の封筒が握られていた。
四人は再び、図書室の奥に集まっていた。
机の上には、日誌の写しと校内の人物リスト、手帳に走り書きされたメモが広がっている。
「ねえ、この若き教師って誰なのか、記録には書かれていなかった?」
セレネが問いかけると、アルテミスは日誌の一節を指差した。
【彼は真実を守るために、告発の記録を記した時計を残し、学園を去った。理事長もそれを望まなかった。私も名を記すことは避けた】
「やっぱり、名前は伏せられてる。でも、何か気になる表現があった」
リベルタが続ける。
「日誌に彼と書いてある、つまり男性。そして、学長と理事が告発を望まなかった。となると、当時の理事長周辺に関係していた人物のはず」
ティリットが顔をしかめる。
「でも、百年近く前の話なんだろ?どうやって今に繋がるんだ?」
そのとき、図書室の扉が開いた。
「あなたたち、またここにいたのね」
姿を見せたのはアレクシアだった。
四人は一瞬身構えるが、彼女は穏やかな声で言った。
「もう隠すつもりはないの。少しだけ、昔話をさせて」
静まり返った部屋に、彼女の言葉が落ちていく。
「C.L.ヴァレンタインには、信頼していた教え子がいたの。その人物は後に、学園で講師となり、理事会の腐敗に気づいてしまった。そして記録を残そうとしたけれど、その告発は内部崩壊の恐れを理由に握り潰されたの」
「その教師が、時計を残した人物?」
アルテミスが尋ねると、アレクシアはゆっくり頷いた。
「名前はオスカー・ヘイル、私の父よ」
衝撃が走った。
アレクシアのまなざしには、誇りと悔しさの入り混じった光があった。
「私は父の無念を知っていた。けれど、それを表に出す覚悟はなかった。長い間、学園の歴史は静かに守られるべきだと思っていたの。でも、誰かがこの記録を動かした。だから今、あなたたちに託すしかないの」
「動かしたのは誰ですか?」
リベルタが問い詰めると、アレクシアはためらいがちに答えた。
「おそらく現在の学長、カイ・エルバート。彼の曾祖父は、当時の理事長だった。そして彼はこの記録の存在を知っている。何度か、私にもそれとなく確認してきたことがあるの」
「つまり、家名の名誉を守るために、今でも真実を封じようとしている」
セレネが低く呟いた。
「それだけじゃないかもしれないわ」
アルテミスが、懐中時計を手にして続けた。
「この記録が表沙汰になれば、学園の信頼も、寄付金も、組織そのものも揺らぐ。誰かが、それを防ごうとしている。逆に誰かは、それをあえて暴こうとしてる」
「真実を隠したい者と……暴きたい者……」
ティリットがつぶやく。
その時、図書室の外から、誰かが足早に近づく音がした。
「見つけたぞ、君たちに話がある」
扉が開いて現れたのは、学長のカイ・エルバートだった。
エルバートの手には、一通の封筒が握られていた。

