この事件をきっかけに、2人で過ごす時間が日に日に長くなっていった。
朝の登校。お弁当の時間。部活帰り。
土曜日にはサッカーの試合を見に行き、日曜日は図書館で一緒に宿題をした。

どうしよう。
本気で好きになってしまっていた。
小学生の時に一緒に入れた風呂に、きっともう入れない。

学年が変わって高校2年の秋。
朝の登校の待ち合わせの時刻にカナタが来なかった。

つい先日初めて手を繋いだこの場所。
ここが私たちのいつもの待ち合わせ場所だった。

「風邪かな。連絡しかしもなしに」
こんなことは初めてだった。

そう。初めて。
そしてこの日から、私は一人で高校に通わなければいけなくなったのだ。

夕方にカナタのお母さんから連絡があった。
自宅を出てすぐ。アパートの前で、曲がり切れなかったトラックに巻き込まれたのだと。

即死だった。

スマホを持つ手がガタガタと震えた。
足元が沼の様にぐにゃりと歪み、膝から崩れ落ちてしまった。

「ごめんね。カナタ」
朝の待ち合わせなんてしなければ良かった。
あと5分遅く家を出れば、こんな結果にはならなかったかもしれないのに。

そもそも今日の朝、カナタの家に私が迎えに行けば良かった。
なぜ気がつかないまま、普通の1日を過ごしてしまったの。

昨日は「またね」って別れたじゃない。
突然のことすぎて、涙も出ない。

カナタ。
本当に死んでしまったの?

認められそうにない。
だって私は、1番近くにいたはずなんだもの。