夜空に、突然出現した閃光。
 維麻が怯えた声を出したので、僕は努めて落ち着き払ってみせた。

「え、何!? なんなの!?」
「ザネリ彗星が、光った……?」

 通常はふつうの星と同じように一定の光を発するだけの彗星が、突然に強く発光する。
 この現象は……。
 僕は事前に調べた知識を、必死に思い出す。
 
「アウトバーストだ!」

 宇宙を漂う塵──スペースデブリと彗星が衝突したときに稀に起こる天体現象だ。事前の予測はできない、珍しい現象。
 僕が維麻にそれを告げようとした。
 その、次の瞬間。

「流れ星!」

 流れ星が──維麻の目にもハッキリと見えるような、まばゆい流れ星が、いくつも、いくつも、筋になって降り注ぐ。

「すごい……流星雨だ……」

 彗星のまき散らす塵が、地球の大気に衝突して起きるのが流れ星で。
 今さっき起きたアウトバーストによって、瞬間的にたくさんの流れ星が観測できるようになったのだ。

 肉眼でギリギリ観測できるレベルの、地味な彗星。
 そのザネリ彗星が、誰にも予測できなかった「奇跡」を起こした。

 幾筋も、幾筋も。
 星が瞬いて、煌めいては消えていく。

 僕たちは、降り注ぐ流れ星の雨を呆然と見上げた。