……先週、維麻は待ち合わせをしていた電車に乗り込んでこなかった。
 僕はあまりにも心配で、勝手に維麻の入院している病院に行ってしまった。
 デリカシーがなかったし、自分の不安を拭い去ることにばかり意識がいっていて、維麻の気持ちを考えていなかったのだな、と今になればわかる。

 妙なくらいに清潔な病院の、最上階の一番奥。
 東条維麻、という名札のかかった病室。
 そこには、いつも鮮やかな色の服をまとって元気そうに振る舞っている維麻はいなかった。
 すっかり痩せて、薄っぺらい身体に病院の寝間着。
 嫌でも、思い知らされた。
 
 ああ、維麻は病人なんだ。
 きっと助からない、病気なんだ。
 
 僕の姿を見つけた維麻は、悲しさと絶望をない交ぜにしたような表情で息を呑んで──それから、怒って、怒って、怒りまくった。
 いつも静かに微笑んで、プラスの感情もマイナスの感情もけっして溢れてしまわないようにしている維麻が地団駄を踏んで怒っていた。

 どうして。なんで、来るんだよ。
 きみの前でだけは、ずっと元気な維麻でいたかったのに。

 そう、維麻は激昂していた。
 激しく感情を昂ぶらせて、僕を責め立てていた。

 だめ、だめだ。
 そんなことをしたら──。